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[ クライム/倒叙 ]
ロムニー・プリングルの冒険
クリフォード・アシュダウン 出版月: 不明 平均: 6.00点 書評数: 1件

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No.1 6点 弾十六 2022/05/01 00:57
平山雄一先生の貴重な訳業。残念ながら同人誌扱いの出版です。電子本で出してくれないかなあ。カッセル誌連載時のイラストは掲載されていません。(Gutenberg Australia “The Adventures of Romney Pringle”で数枚が見られます) [2022-5-3追記: 後で探したらフチガミさんのブログで「クリフォード・アシュダウン “The Adventures of Romney Pringle”全挿絵」という記事があり、挿絵19葉が掲載されていた!さらに「クリフォード・アシュダウン “The Further Adventures of Romney Pringle”全挿絵」で挿絵13葉も!本書の表紙の絵は第11話「銀のインゴット」からだとわかる。]
作者Clifford Ashdownとはオースチン・フリーマンと医者仲間ジョン・ジェームズ・ピトケアンの合作ペンネーム。フリーマンとしてはソーンダイクものに先立つミステリ作品。戸川さんの解説によると、本シリーズはフリーマンが書いた文章だろう、と本国でも思われているらしい(私には文体解析は無理)ので、共作者John James Pitcairn(1860-1936)の役割って何だったのだろう。ハロウェイ刑務所の医者だった、というから犯罪者から聞いた面白いネタを提供したのかも。
意図を書かずに、主人公の行動で話が進んでゆく作品。読み進めると妙な行動の意味がわかってきます。こういう洒落た書き方は大好き。(2022-5-3追記: ただし、こういう構成になっているのは最初の三作だけ。他の作品は読者の思考の一歩前を行くスタイルから、読者と共に進むスタイルになってて残念。わかりにくいよ!という文句があったのか) 世界を斜めに見ている感じは、いかにもフリーマンっぽい。作者には最初から犯罪者寄りの視点があったのだろうと思う。
まとめて読むと、最終話が力作で、これを読んで初めて全貌が理解できると思いました。
作中現在は、序文から考えて、少し前の過去のようだが、手がかりが少ないので雑に1900年とした(p20から1897年以降、p32からヴィクトリア女王時代)。作中価値の換算は英国消費者物価指数基準1900/2022(130.96倍)で£1=21381円。
以下、タイトルは雑誌発表時のものを優先、といってもサブタイトルが付いているのを除けば、タイトル変更はありません。収録順も本書では初出順を守っているので変更なしです。原文はGutenberg Australiaで全12篇を入手しました。
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(0) 短い序文
単行本に付されたもの。ロムニーという名(name given)の金持ち紳士が今年(the present year)、サンドイッチ(Sandwich)で死に、ちょっとした知り合いだった筆者(the present writers, ここ複数なのには意味がある?)が彼の残した驚くべき物語の原稿を発表しましょう、という口上。
(1) The Adventures of Romney Pringle, (1) The Assyrian Rejuvenator (初出Cassell’s Magazine 1902-6 挿絵Fred Pegram)「アッシリアの回春剤」: 評価6点
既訳は山田 辰夫 訳「アッシリアの回春剤」HMM1975年1月号。
あらかじめ変装の用意がある、という事は昔から悪いことをし慣れている、ということなのだろう。計画的、というより行き当たりばったりなのだが面白い。
多分、Rehuvenatorとは、作品中では明確に表現されてないけど、今で言うバイアグラみたいな効果が期待されていたのだろう。
p6 一回6ペンスの便利なエレクトロフォン(through a convenient electrophone, price sixpence in the slot)♠️ロンドンで1895-1925に存在していたオーディオ・システム。英Wiki “Electrophone (information system)”参照。6ペンスは535円
p7 四月五日
p8 著作権代理人(Literary Agent)♠️A.P. Wattが始めたのは1870年代後半だという。まだまだ胡散臭い業界だったのだろう。
p8 休演中(resting)
p10 収入印紙代を含んで16ペンス(ten and sixpence, including the Government stamp)♠️この書き方だと10シリング6ペンスのこと。(2022-5-3追記、以下の16ペンスの所も修正)
p10 半ソブリンと六ペンス(a half sovereign and a sixpence)♠️10シリング6ペンスは11225円。コインはヴィクトリア女王の肖像、半ソブリン(=10シリング)は純金, 4g, 直径19mm。六ペンスは純銀, 3.1g, 直径19mm。
p14 プリングルはこの情景を興味津々で眺めていた(He had been an interested spectator of the scene)♠️誤訳。このHeは直前のThe cabmanのこと。
p17 十六ペンスというのは、普通の銀行だったら小切手を発行するのを渋る金額だ。だからたいてい郵便為替が送られてくる(Ten-and-sixpence being a sum for which the average banker demurs to honour a cheque, the payments were usually made in postal orders)♠️しつこいが正しくは10シリング6ペンス。こういう知識は他では得られないだろう。
p20 タクシー(モーターキャブ)運転手(the driver of a motor-cab)♠️ロンドンに最初にmotor cabが導入されたのは1897年のことで、電気自動車だった!石油系自動車のタクシーは1903年が最初だというから、ここに出てくるのはBerseysと呼ばれた電気自動車なのだろう。
(2022-4-30記載)
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(2) The Adventures of Romney Pringle, (2) The Foreign Office Despatch (初出Cassell’s Magazine 1902-7 挿絵Fred Pegram)「外務省報告書」: 評価6点
既訳は深町 眞理子 訳「外務省公文書」クイーンの定員II。
こちらはあらかじめ計画があったのか。何かあるかな?と近づいたらたまたま大きな収穫があった、という事なのかも。
Despatchは「通信文、書簡」だと思うし、作品中でも「書類、書簡、公文書」などと訳されていて、タイトルに採用した「報告書」だと意味がズレている感じ。「書簡」の方が内容に合致している。
p23 十二---赤---不成立(Twelve—rouge—manque—pair)◆マンク(manque)はルーレット用語で1〜18、pairは偶数。翻訳はmanque pairと解釈したの?
p23 ディーラー(tailleur)… 親(table)
p23 謎の著作権代理人に変装している◆原文にはない文句。勝手に入れるのは嫌だなあ。
p24 このクラブはそれほど大きくないので… 侮辱されたと思うのがあたりまえだ(The club was not so large that a member need consider himself insulted)◆「侮辱されたと思う必要はない」という解釈が正しそうだ。
p24 ボンド教授(Professor Bond)◆ちょっと調べてみたが架空人名か。
p29 無料送達郵便物(frank)◆「無料送達の署名」のことか。
p32 国王陛下のメッセンジャー(Queen's messenger)◆ここは時代を区別する重要単語なので正確な翻訳をお願いしたいところ。
p38 そうそう、今回の騒動はちょっと行き過ぎだと思いますよ… ◆これ以下のプリングルのセリフは参照した原文に無い。深町訳にもなかった。初出雑誌版には存在していたのかも(となるとp23も初出時にはあったのか?)
(2022-4-30記載)
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(3) The Adventures of Romney Pringle, (3) The Chicago Heiress (初出Cassell’s Magazine 1902-8 挿絵Fred Pegram)「シカゴの女相続人」: 評価6点
既訳は乾 信一郎 訳「シカゴの女相続人」シャーロック・ホームズのライヴァルたち①。
話の流れが巧み。一種の暗号もの?(違います)
p41 六月の末… 誰もかれもがロンドンから脱出♣️ヴァカンス・シーズン、という事?
p42 すり切れた折り目には、郵便切手を貼って裏打ち(backed with postage-stamp edging at the well-worn creases)♣️マーチン・ガードナー注釈の『ブラウン神父の童心』で昔は切手シートの端の白い余り部分(専門用語で「耳紙」というらしい)をセロテープのように使っていた、とあった。切手自体だともったいないので、切手シートの耳紙(edgingがそれを意味してる?)の事じゃないだろうか。
p43 入場券を半分に千切るとデスクの下に捨て♣️大英図書館のマナーなのだろうか。
p46 イギリス貴族とアメリカ人の結婚はいまだに人気♣️この頃からそういう風潮だったのだ。オルツィさんの小説にもよく出てきますね。
p52 彼が国外に退去することが、はっきり確かめられます(You will make certain at any rate that he is safely out of the country)♣️試訳「あなたはいずれにせよ奴が無事国外に出るのを確実にしたいのですね」
p52 現金(cash)♣️ここは次の文の「紙幣」と対比させているので「硬貨」(金貨で良いか)が良いだろう。
p52 紙幣を渡せば、問題なく相手も使えます(and if you give him notes and he had any difficulty in passing them, as he might have, your object would be again defeated)♣️平山先生は難しいと端折っちゃう癖がある。ここは「もし奴に紙幣を渡して、それを使うのに困難があった場合(多分そうなるでしょうが)、あなたの目的は同じく達成されません」ということ。紙幣(5ポンド以上の高額なものしか当時は存在しなかった)は番号が銀行に記録されており、アシがつきやすいのだ。
(2022-4-30記載)
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(4) The Adventures of Romney Pringle, (4) The Lizard’s Scale (初出Cassell’s Magazine 1902-9 挿絵Fred Pegram)「トカゲのうろこ」: 評価5点
ちょっと前三作と違った印象だが、まあそうなるよね、という作品。
こういう手で上手くやった人たちが実際にいたのでしょうね。出てくる若者のセリフは標準語に訳されているが、原文ではかなり訛っている。(Didn't yew iver see himとかSars o' mine! Noo I come te look at yewとか)
翻訳はふらついている感じで、ところどころ微妙。
p63 査問法廷まで開いた(held a crowner's 'quest)♠️インクエストはこういう目的でも開かれるものなのか?調べつかず。
p63 ロックスハムとバートン(Wroxham and Barton)♠️調べつかず。
p73 七月二十五日
p73 小額紙幣で(the cash in small notes)♠️上述(p52)とは違ってcashで「現金」を意味している。その後、10ポンド紙幣を用意しているので間違いない(当時は1000ポンド紙幣もあったから10ポンド紙幣は十分smallなのだろう)。本作の状況だとアシがつく事を心配しなくて良い、ということか。
(2022-5-1記載)
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(5) The Adventures of Romney Pringle, (5) The Paste Diamonds (初出Cassell’s Magazine 1902-10 挿絵Fred Pegram)「偽ダイヤモンド」: 評価4点
前作の登場人物が再び現れる。若干のネタバレありなので順番に読むのがお薦め。
頭をほとんど使わない話なのでつまらない。作者はアムステルダムに行ったことがありそう。
p81 一時間後(an hour later)◆ちょっとわかりにくい文章だが、直前のセリフの後、場所を相手のホテルに移している。原文も同じ。
p82 俺の縄張りで(at my pitch)◆赤帽(porter)の担当は馬車が止まった場所で決まっていたようだ。
p83 朝起きたとき、北海は好天に恵まれていた(The North Sea was in anything but a propitious mood when he awoke)◆どうしてこういう文章になったのかなあ。その後も変テコ。試訳(概略)「目を覚ました時、北海は好天とは程遠かった。「フック・ファン・ホランド」経路は当時まだ存在せず(’Hook of Holland’ route was not then in existence)、普通12時間程度の航海が16時間に延びた。大部分の乗客は長引く苦痛で、朝食には何の興味もなくなった。プリングル他数名以外、濡れた風通しの悪い上甲板に耐えられる者はおらず、船がマース川に入り、ロッテルダムが見えてきたとき、疲弊した行列がサルーンからやっと出てきた。」
このHook of Holland経路とは、従来オランダ行き航路はHarwichとRotterdamを結んでいたのだが、1893年フック・ファン・ホランド(Hoek van Holland)駅が出来てロッテルダムまで陸路が可能になったため英国Great Eastern Railwayが連絡港をフックに変更し、ロンドン=ロッテルダム間が2時間短縮となった事を指しているのだろう。ロンドンを夕方出発したらアムステルダムの朝食時間に間に合ったようだ。(ということは、本作は1893年以前の事件となる)
p85 母国語---すなわち全世界の共通語(in his native tongue the real lingua franca of the civilized world)◆全くもう、思い上がりも甚だしい…
p85 ジョン ・M・ヒュー… 商人に変装するときの名前("John M'Hugh," as a name well in keeping with the commercial atmosphere in which he found himself)◆この表記は「ジョン・マクヒュー」が正解だろう。
p86 現金だな?(Is it cash)… イギリスの紙幣です(bank English notes)
p91 十ポンド札… 二十ポンド札◆当時はWhite note、紙幣サイズはいずれも211x133mm。
(2022-5-1記載)
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(6) The Adventures of Romney Pringle, (6) The Kailyard Novel (初出Cassell’s Magazine 1902-11 挿絵Fred Pegram)「マハラジャの宝石」: 評価5点
原題はスコットランド表現で「ケール畑の小説」? (これについては訳者解説にちゃんとした記載がありました)
成り行きまかせの話なので、つまらない。それに獲物の処分に困ると思うのだが…
p94『飲んだくれの隣人』(Drouthy Neebors)♣️スコットランド訛り。
p110 書斎のドアはほぼ壊れて(The study-door was already tottering)♣️まだ「ぐらついている」くらいの状態。ところどころ日本語の選択が甘いのが惜しい。(2022-5-3追記: 挿絵を見ると「今にもはずれそうだった」が適切か)
(2022-5-1記載)
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(7) The Further Adventures of Romney Pringle, (1) The Submarine Boat (初出Cassell’s Magazine 1903-6 挿絵Fred Pegram)「潜水艦」: 評価4点
いろいろ納得がいかない話。翻訳も大きな手ぬかりがある(p117)。小説家ってネタに困ると活劇に逃げちゃうものなのかなあ。平山先生は解説でモリスン「ディクソン魚雷」(1894)に言及していない。シャーロック「ブルース・パーティントン」は1908年だ。
p112 密封食品(air-tights)♠️缶詰肉(tinned meats)の米国流表現のようだ。プリングルは当時お金に困っていた、という描写なのだろうか。
p112 ちょっとすいませんが(Nous ne vous dérangeons pas)♠️ここは原文フランス語。英語訳は付いていない。続く「イギリス人のブタ野郎…(Cochon d'Anglais…)」「この野郎!鼻をねじ切ってやろうか(Canaille! Faut-il que je vous tire le nez?)」も同じ。
p113 わかりやすいように要約すれば(Freely translated)♠️元の会話はフランス語だった、ということ。
p116 ここらへんの記述によると換算レートは1ポンド=25フラン、実際には金基準1900で1ポンド=25.15フラン。
p116 小額紙幣… 五ポンド札で(in small notes―say, five pounds each)
p117 ウォルポールの有名な法則(Walpole's famous principle)♠️調べつかず。
p117 ブルートン街のことですか?(Bruton Street, n'est-ce pas?)♠️ここからの会話は全部フランス語。それがわからないと話が全くチンプンカンプンになる。平山先生はルビをつけ忘れたのだろうか?
p121 帽子にこびりついた破片を調べた結果、あやういところで命を落とすところだったと知れた!(And as he surveyed the battered ruins of his hat, he began to realise how nearly had he been the victim of a murderous vendetta!)♠️試訳「彼は潰れた帽子の残骸をつくづく眺め、すんでのところで報復殺人の犠牲者になることから逃れたのを思い知った」
p126 ビッグ・ベンが八回鐘を鳴らした(Big Ben boomed on his eight bells)♠️午後4時30分。鳴らし方のルールはきっと何処かに書いてあるはずだが、調べていない。
p126 拳銃(revolver)♠️フランス陸軍の当時の制式はModèle 1892 revolver(MAS製造)だが、型式を示す記述は本文に無い。(2022-5-3追記)
p126 そちらも助けを呼べないご身分のようですな(I can assure you we were under no necessity of calling on you for your help)♠️試訳「我々には、あなたの助けを求めてお呼びする必要など全く無いことをご承知おき願いたいですな」
p127 時計が(Dent’s clock)♠️ビッグ・ベンのこと。大時計の製造者はEdward John Dent(1790–1853)
(2022-5-2記載)
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(8) The Further Adventures of Romney Pringle, (2) The Kimberley Fugitive (初出Cassell’s Magazine 1903-7 挿絵Fred Pegram)「キンバリーの逃亡者」: 評価5点
カラカラで埃っぽい街を自転車で疾走する冒頭が良い。話はまあまあ。ソーンダイク博士並みの行動もある。翻訳の細かいところまでは指摘しないが、訳文にかなりの揺れがある。
p128 その結果を変えさせることはできなかった(without inducing the pointer to travel beyond "change")◆晴雨計の表示は”RAIN”—“CHANGE”—“FAIR”、なのでここは「針は“曇り”から動かなかった」という意味。この用語、辞書には載っていないようだ。
p132 どんどん水が◆ここは雨水ではなく原文blast(突風)のこと。
p133 その後まんまと逃げられるとは、なんというヘマだ!(And how clumsily he made his escape afterwards!)◆訳者はどういう情景を思い浮かべてるのかなあ。試訳「そのあとヘドモドしながら逃げていったなあ!」
p134 くたびれてはいるが… (Physical weariness would not be denied)◆ここら辺、かなり変テコな解釈。試訳(概要)「肉体的な疲れは否めず、それに[涼しくなったので]一晩中眠れる期待もあり、プリングルは、見知らぬ男の企みを暴く今の活動を一時中断することにした。」
p134 この「I・D・B」は違法ダイヤモンド購入禁止条例(Illicit Diamond Buying Act)の略。単純にカッコの場所の間違い。
p139 あの自転車は本来三、四ポンドの価値(a machine intrinsically worth some three or four pounds)◆これで安物だというが6〜8万なら結構な感じ。多分、上モノはかなり高いのだろう。(2022-5-3追記: 当時の広告で£10が普通のようだ)
p142 手荷物預け所… 1シリング◆鉄道荷物の預け賃
p142 彼の日よけが付いている自転車は、もう少し丁寧な扱いだった(his own followed with a shade more consideration)◆a shadeでちょっとした程度を表す。(a littleみたいな感じで合ってる?) 日よけ付きの自転車とはねえ。
p143 ハリッジからオランダのフークまで(from Harwich to the Hook of Holland)◆p83既出。とすると本作は1893年以降の話になる。
(2022-5-3記載)
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(9) The Further Adventures of Romney Pringle, (3) The Silkworms of Florence (初出Cassell’s Magazine 1903-8 挿絵Fred Pegram)「フローレンスの蚕」: 評価5点
こちらもソーンダイクばりの活躍。イースト・サセックス州ライ(Rye)の観光案内っぽい作品。
p145 絞首刑(gibbet)… さらし台(Rye pillory)♣️ライ町庁舎の二大名物。Wiki “ライ(イングランド)“参照。
p145 銀行休業日(Bank Holiday)♣️英国の祝日のこと。
p145 チンク港(Cinque ports)♣️シンク・ポーツ(五港)が定訳らしい。
p156 驚くべき発見♣️翻訳では続く数字があべこべになっている。この数字、実際にwww.ngdc.noaa.gov/geomag/calculators/magcalc.shtmlで試算できる。色々試したが昔の計算方法とは違うらしく、一番近い数字となる1899年が作中現在なのだろうか。(2022-5-3追記)
p157 年に一度のボートレース(annual regatta)♣️実際に当時ライで開催されていたようだが詳細不明。レガッタ・レースは夏に開催されたようだ。
(2022-5-3記載)
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(10) The Further Adventures of Romney Pringle, (4) The Box of Specie (初出Cassell’s Magazine 1903-9 挿絵Fred Pegram)「黄金の箱」: 評価5点
フリーマンは海の描写が巧み。動きに臨場感がある。推理味は薄い。
p163 ティルベリー近くともなれば、テムズ川もきれいな流れになってくる(for nearing Tilbury the Thames becomes a clean)♠️テムズ川が海に出るあたりの港。当時は生活排水などでまだ汚かったのかも。テムズに流れ込む下水整備が始まったのは1860年代から。
p169 五千ソブリンの金貨♠️当時のソブリン金貨はヴィクトリア女王の肖像、純金,  8g, 直径22mm。5000枚なら40キロ。
p172 コールドミートのサンドウィッチ(cold-meat sandwiches)♠️ここら辺の描写にリアリティを感じる。
p177 あの財宝に彼は翻弄されっぱなしだった(he knew that fortune was playing his game for him)♠️試訳「幸運の神は彼の味方になってゲームを進めているようだった」
p177 もろもろの星は軌道を離れて彼と戦った(the stars in their courses were fighting for him)♠️訳注「士師記5:20のもじり」(KJV) They fought from heaven; the stars in their courses fought against Sisera (文語訳)「天よりこれを攻るものありもろもろの星其の道を離れてシセラを攻む」もじりの方は上の文と同様 “for him” なので「彼のために戦った」という訳が良いだろう。
p179 一時間当たり2シリング(at two shillings each)♠️2138円。ちょっとした手伝いの手間賃。
(2022-5-3記載)
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(11) The Further Adventures of Romney Pringle, (5) The Silver Ingots (初出Cassell’s Magazine 1903-10 挿絵Fred Pegram)「銀のインゴット」: 評価6点
あれよあれよ、という感じ。今までとトーンが変わるが実に良い。作者たちは最初から本作と次作を書きたかったのかも。
p181 紋章と頭文字(a crest and monogram)
p188 フロリン硬貨と半クラウン硬貨(the florin and two half-crowns)◆当時はヴィクトリア女王の肖像、フロリン硬貨(=2シリング)は純銀, 11.3g, 直径28.5mm、半クラウン硬貨(=2.5シリング)は純銀, 14.1g, 直径32mm。
p189 サルーン・バーのドア(the door of the saloon bar)◆平山先生の解説にある通り、労働者用のthe public barは別。
p189 試験機(trier)◆どんなのだろう。調べつかず。
p193 自分の金で卵とベーコンとコーヒーの朝食の出前を(the expenditure of some of his capital on a breakfast of eggs and bacon and muddy coffee from "outside")
p194 あの貧乏人は知らねえ… (But the pore chap doesn't know, yer know—E 'asn't bin in London long!)◆歌。調べつかず。
(2022-5-3記載)
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(12) The Further Adventures of Romney Pringle, (6) The House of Detention (初出Cassell’s Magazine 1903-11 挿絵Fred Pegram)「拘置所」: 評価6点
実に生き生きとした描写で怖い。挿絵に二輪馬車(ハンサム)のトラップ・ドアがチラリと見えます。最後のセリフは、そこが寝ぐらに近いんでしょうね。(手続きに行くつもりではないと思います)
p199 絆創膏(a strip of old-fashioned court-plaster)♣️どんなものか画像で見たがよくわからなかった。半ソブリンの大きさはp10参照。
p205 ごちゃまぜの服装(a jumble of costumes)♣️当時は統一されていなかったんだろう。
p214 あの親切な男(the Samaritan)♣️何回か読み返して、病人を助けて運んで行った人のことだとわかりました。
(2022-5-3記載)


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