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[ SF/ファンタジー ]
宇宙戦争
ハーバート・ジョージ・ウェルズ 出版月: 1953年01月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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日本出版協同
1953年01月

岩崎書店
1961年01月


1962年01月

早川書房
1963年01月

角川書店
1967年01月

旺文社
1967年12月

日本ブック・クラブ
1973年10月

春陽堂書店
1977年04月

あかね書房
1982年10月

文研出版
1982年11月

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1997年08月

講談社
1999年12月

ユニコム
2001年02月

早川書房
2005年04月

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2005年05月

東京創元社
2005年06月

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2005年07月

グーテンベルク21
2012年12月

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2016年06月

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2017年09月


2019年09月

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2023年09月

No.2 7点 Tetchy 2024/05/10 00:37
正しい巻数は忘れたが、小学生の頃、ある日突然両親が20巻ぐらいになる世界文学全集の類を買い与えてくれた。しかしそのほとんどは読まなかったが、その中に収められていた作品の1つが本書『宇宙戦争』で、これはその題名がそそられて読んだのだが、その時に受けた衝撃は凄く、40年経った今でも最後の結末は覚えている。
そして2005年に公開された映画版ももちろん見た。それは原作に実に忠実に作られていたが、なんだか物語としてはあっけなく感じた。
そしてとうとう2021年になって子供向けにリライトされたものでない翻訳本に当たることになった。

さてこの火星人が地球に襲来することになったのは彼らの星が終末を迎えており、移動をするために地球を征服するためだとされている。
この惑星の終末が永劫の冷却とされているがこれは現在問題視されている地球温暖化とは真逆だ。そして地球温暖化は北極圏・南極圏の氷山が融解して起こる海水面の上昇による陸地の水没が懸念されている。
確かに地球温暖化による北極圏・南極圏の氷山が融解で極寒の冷気が南下もしくは北上することで多大な気候変動が起き、平均気温が低下し、世界的な氷河期に陥ると云う予測もあったが、現在のところは正直どうなるかは判らないらしい。

そして彼らが地球に襲来するために用いたのはロケットではなく、なんと巨大な大砲と予測されている。天文観測台によって白熱ガスの噴出が10回ほど火星から観測され、それが宇宙船を地球に向けて飛ばしたことによるものとされている。
宇宙に向けて宇宙船を飛ばすために大砲を用いると云う発想はヴェルヌの『月世界旅行』と全く同じアイデアである。イギリスとフランスと両者の違いはあるが、2人の知の巨人たちの発想は同じだったのか。それともヴェルヌの『月世界旅行』の発表が1870年で本書が1898年と後発であることを考えるとウェルズはヴェルヌのアイデアを拝借したのかもしれない。もしくは当時の宇宙計画は大砲で飛ばすことが主流の構想だったのかもしれない。
しかし火星から大砲で宇宙船を送り込むのに、それら全てがイギリスのロンドン周辺に飛来すると云うのはかなりの精度である。超一流のスナイパーでも出来ない芸当だ。

原題は“The War Of The Worlds”と実は『宇宙戦争』ではなく『2つの世界の戦争』なのだ。つまりそれは火星と地球を指すが、全てがイギリス、しかもロンドンで完結している。それはウェルズが当時、いやウェルズのみならずイギリス人のほとんどがイギリスこそ世界の頂点であると自負していたからこそのこの題名なのだろう。つまりイギリスが完膚なきまでに火星人に蹂躙されることイコール世界が蹂躙されるというわけだ。

私が一番驚いたのは火星人が突然亡くなった原因について明確に示されていないことだ。私が読んだ児童書ではバクテリア、即ちカビが免疫のない火星人たちに取り憑いて彼らは全滅したとされていたが、本書では病原菌の類に感染して息絶えただろうが、その原因となる細菌は解剖しても見つからなかったとされ、謎のままで終わる。私はバクテリアと云う言葉をこの作品で覚えただけにこれはいささかショックであった。

本書から時が流れること60年余りの1960年代から地球人が探査機を送り込み、火星探査を進めている状況だ。そして今2030年を目標に有人火星探査が計画されている。そう、我々地球人が今度は火星に乗り込むのだ。
その時本当に火星人がいたら、このウェルズの古典はブーム再燃となることだろう。そして火星探査機によって地球人の存在が向こうに知られ、本当に侵略が始まったら、130年を経てフィクションからノンフィクションへと変貌する著書になる。

名作はいつまで経っても色褪せないし、そしてまだ我々はウェルズの想像力に及ばない現実を生きている。

No.1 7点 クリスティ再読 2021/04/19 23:19
SF大古典だけど、予断をなくして読むと、これは「戦争」の小説のように思われる。
突然の脅威と、それにパニックを起こして逃げ出す人々。軍隊は時折一矢報いるように見えるが、初めて目にする兵器に手も足も出ず、圧倒的な戦力差に蹂躙される都市....
いや、この小説を読んでいて、脳裏に浮かんだのは、なによりもゴジラ第1作だった。あの映画も、遅ればせながらの「戦争」の映画であり、ゴジラの猛威という「架空」によって、あらためて戦災の理不尽を噛みしめなおした映画のように感じられる。しかしこの「宇宙戦争」とはベクトルが真逆なのが、面白い。「宇宙戦争」は普仏戦争以降50年近くヨーロッパに平和が続いたそのただ中で、来るべき第一次世界大戦を幻視していたようにも感じられるのだ。毒ガスと戦車、飛行機、ロケット弾による戦争が作家の空想の中から、現実化していった...と思うと、実にこれが「SFならざるSF」のようにも思えて、文明評論家ウェルズの面目躍如のようにも感じられる。
そういう、戦争と難民の小説である。


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ハーバート・ジョージ・ウェルズ
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