海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
暗殺のソロ
英国ではハリー・パターソン名義
ジャック・ヒギンズ 出版月: 1981年12月 平均: 6.00点 書評数: 1件

書評を見る | 採点するジャンル投票


早川書房
1981年12月

早川書房
1986年04月

No.1 6点 tider-tiger 2019/12/25 23:42
~当局がクレタン・ラヴァーと名付けた謎の暗殺者の正体は有名なピアニストだった。クレタン・ラヴァーことジョン・ミカリは世界各地へと演奏旅行に赴くかたわら、要人の暗殺を繰り返している。だが、イギリスでのお仕事で逃亡の途上誤って無関係な少女をひき殺してしまう。ミカリには彼女の父親が英国パラシュート連隊で名を馳せた勇士エイサ・モーガン大佐だとは知る由もなかった。~

1980年英国。本国ではハリー・パターソン名義で出版される。
コンパクトにまとめてあり、リーダビリティも高い。だが、そうしたうまさが物足りなさと表裏一体となってしまった感じ。血流は良いが、背骨が弱い。
背骨の弱さとは、ミカリが演奏会を行うと要人の暗殺事件が起きるという非常にわかりやすい事実がモーガン大佐の登場まではずっと見落とされてきたのはおかしいとか、そういうことではない。
ジョン・ミカリの過去の話なんかはまあまあ面白いのだが、ミカリの特異な人間性や能力についてあまり具体性や説得力がない。主義主張があるわけでもないのになぜ要人暗殺を繰り返すのかもいまいちわからない。
エイサ・モーガン大佐についてもどうも書き流している印象がある。モーガンと娘の関係についてほとんど筆が費やされていないのが特によくない。そのせいで復讐が妙に図式的で切実さに欠けている。父と娘のエピソードが一つ二つは欲しい。
主要人物二人の描き方がいまいち薄味であるにもかかわらず、脇筋のIRAに関しては妙に筆に力が入っている。IRA所属の少年が妙に輝いて見えるのは気のせいか。
うまい画家は余計な線を描く必要がないので、絵に厚みが出ないと逆に悩むことになったりするらしいが、同じように本作はさまざまな要素が盛り込まれ、そつなく仕上がっていて面白いのになぜか厚みを感じさせないのである。それがうまさであるならばマクリーンの『女王陛下のユリシーズ号』みたいに不器用不細工なくらいの方がいいと思ってしまう。


キーワードから探す
ジャック・ヒギンズ
2000年12月
虎の潜む嶺
平均:5.00 / 書評数:1
1997年03月
シバ 謀略の神殿
平均:5.00 / 書評数:1
1994年02月
嵐の眼
平均:4.00 / 書評数:1
1991年08月
復讐者の帰還
平均:5.00 / 書評数:1
1987年08月
地獄の群衆
平均:6.00 / 書評数:1
1986年01月
闇の航路
平均:7.00 / 書評数:1
1985年12月
鋼の虎
平均:8.00 / 書評数:1
1984年07月
テロリストに薔薇を
平均:7.00 / 書評数:1
1982年03月
真夜中の復讐者
平均:6.00 / 書評数:1
1981年12月
暗殺のソロ
平均:6.00 / 書評数:1
1978年05月
脱出航路
平均:9.00 / 書評数:1
1978年02月
死にゆく者への祈り
平均:6.00 / 書評数:2
1976年01月
鷲は舞い降りた
平均:8.00 / 書評数:11
1974年08月
地獄島の要塞
平均:6.00 / 書評数:1