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ミステリの祭典

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涙が乾くとき
私立探偵シカゴのマック

作家 トマス・B・デューイ
出版日1984年10月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 mini
(2015/09/30 09:57登録)
* 私的読書テーマ、”生誕100周年作家を漁る”、第4弾トマス・B・デューイの2冊目

小鷹先生監修の河出書房版『アメリカン・ハードボイルド』は好企画な叢書で、最初は営業上の大人の事情かハメット(それも「マルタの鷹」だぜ)やチャンドラー(こちらは中短編集)から始まっているが、次第にやや日本での知名度的にマイナーな作家が紹介され、ハードボイルドファンには格好の贈り物だった
版型がちょっと中途半端なサイズだったのが弱点だったが、後に何作かは河出文庫化されている
ただし大御所のハメットやチャンドラーなどの文庫化は見送られ、文庫化されたのはマイナー作家が中心だ、まぁこれは当然だろう、大御所だと他の出版社とバッティングするからね
逆に考えれば、文庫化されなかった作家はそれほどマイナーでもないと見なされていたとも言える訳で、大御所以外ではエド・レイシイ、ウェイド・ミラーとかトマス・B・デューイなどがこれに相当する
ただしメジャー級のジョン・エヴァンスは文庫化されている、当時はエヴァンスでも日本ではマイナー扱いだという出版社の判断か?
しかしねえ、ミラーとかデューイだと日本での知名度ではやはりマイナーでしょ、他に読める作品が極めて数少ないのだから

活躍時期もロスマクと被るトマス・B・デューイは、概要についてはポケミス版「非常の街」でも書いたが、今回は小鷹先生の詳しい解説で新たな発見をした
それはデューイの経歴、特に住居の変遷で、幼時をオハイオ、ペンシルヴェニア、ミシガン、イリノイ州などで過ごし、大学はカンザスとアイオワ、シカゴで事務員、カリフォルニア州ハリウッドで編集者、その後首都ワシントンで国務省勤務、戦後はロサンゼルスで会社勤め、しかも作家活動を辞めた後はアリゾナ州立大学で教職に就く
うわー、すげ~引っ越し魔(笑)
デューイの弱点として、ハードボイルド派にしては珍しく、私立探偵が住む街並みが魅力的に書かれておらずあっさりした描写になっている点がある
しかしデューイの経歴見たら納得だぁ~(笑)
シカゴのマックシリーズも、本拠地シカゴの街並みの描写が少ないのが欠点と言われているが、そもそも作者自身がシカゴに住んでたのはほんの一時期だけなんじゃねえの?、こりゃシカゴという街に愛着が無いのも当然だ
実際にシリーズ末期にはマックはシカゴを捨ててロサンゼルスに移り住む決心をするのだそうだ、生まれ故郷を捨てるという珍しい私立探偵だ(笑)

ロスマクと並ぶ正統ハードボイルド派の雄トマス・B・デューイだが、やはり持ち味は住む街の雰囲気とかじゃなくて、登場人物を見つめる温かい眼差しなんだろう、♪あ~ったかいんだから~♪
ただこの「涙が乾くまで」は一般的ハードボイルド作品としては一応の水準作なのだろうけど、何しろ読める作が2冊しか無いので分からんがデューイの中では凡作の類なんじゃないかなぁ、何でこれが選ばれたんだろ?

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