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ミステリの祭典

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金剛石のレンズ

作家 フィッツ=ジェイムズ・オブライエン
出版日2008年12月
平均点9.00点
書評数1人

No.1 9点 mini
(2014/11/13 09:55登録)
死因は病気・事故・自殺様々だが、どんな分野にも”惜しまれつつ若くして亡くなった天才”と呼ばれる人物が居るものである
ロック音楽なら古くはジミヘンやシド・ヴィシャスにニルヴァーナのカート・コバーン、F1ならアイルトン・セナ
芸術分野なら大観や観山と並ぶ明治期日本画の菱田春草
そしてミステリー分野なら本格派でクリストファー・セント・ジョン・スプリッグ
では古典怪奇小説の分野だったら?やはりこの人を挙げたい、その名はフィッツ=ジェイムズ・オブライエン

昨日12日に光文社古典新訳文庫からオブライエン『不思議屋/ダイヤモンドのレンズ』が刊行された
収録短編は異なるが以前に創元文庫から『金剛石のレンズ』の書名で短編集が出ている

南北戦争での負傷が元で早世したオブライエンは、アメリカ作家だが元々はアイルランド生まれで作家として名を上げる為アメリカに移住している、こうした出自が純粋なヤンキー気質のアメリカ生まれの作家には書けない幻想的な味わいを生み出しているのだろうか
ミステリーとホラーの古典時代の歴史的展開には共通点が有る
両分野ともポーという大きな存在が居るのだが、ポーを生んだアメリカはその後は後継者に恵まれず、主導権は完全に英国に握られる、ミステリー分野だと即ちドイルや後続のホームズフォロワー達
アメリカが主導権を奪うのは第1次大全後の本格長編黄金時代に入ってからなのである
実は怪奇小説でも同様の現象が起きていて、ポー以降はアメリカの怪奇小説が沈滞するのを横目に英国ではブラックウッド、M・R・ジェイムズ、マッケンといった専門家を次々に輩出し、英国古典怪奇小説の黄金時代を築き上げた
対してアメリカでは大物怪奇作家を出せなかったが唯一の対抗馬がオブライエンで、ポーとアンブローズ・ビアスの間を繋ぐアメリカの怪奇作家と呼ばれている
オブライエンは怪奇小説のアンソロジーピースとしてよく採用されていて、例の創元文庫『怪奇小説傑作集』にも「あれは何だったのか」が収録されている、創元は以前はアンソロジーに採用された短編は個人短編集から省くという編集部の悪癖が有ったが、この作は『金剛石のレンズ』からは省かなかった、やっと気付いてくれたか創元、今回は新訳だからと言うんじゃなくて本来はそれが当然だ
しかしオブライエンの代表作と言えば筆頭はもちろん表題作「金剛石のレンズ」だ、その豊潤なイマジネーションには驚かされる、作者もう一つの代表作「ワンダースミス」と共にこの2編が読めるだけでもこの短編集の価値が有るというものだ
夭逝しなかったらさらに名作を書いていたかも知れないと思うと本当に惜しまれる
また大滝啓裕氏の懇切丁寧な解説がメチャ素晴らしく、内容手的には8点位だが解説まで考慮して+1点

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