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ミステリの祭典

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屍者の帝国

作家 伊藤計劃
出版日2010年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 アイス・コーヒー
(2014/11/25 19:15登録)
文庫化したので再読。夭折した伊藤計劃の絶筆を盟友・円城塔が書き継いだスチームパンクSF。数々の有名無名、実在非実在のキャラクターたちが登場し壮大な物語世界を盛り上げている。
シャーロック・ホームズに出会う前、英国の諜報員として働くワトソンを主役に据え、死者をロボットのように操る「屍者」の技術が発展した十九世紀末を描いている。世界各地で多発する屍者の誤作動の原因を探るサスペンスや、人間の意志そのものに迫る展開は圧巻だ。
あくまでも伊藤ファン代表の円城氏が伊藤氏に対しての感謝の意を込めて書いた小説であるため、「虐殺器官」や「ハーモニー」の内容に沿ったものになっていることに注意したい。少なくとも伊藤ファンなら楽しめるはずである。
SFサスペンスとしては純粋に面白く、よく出来ている。古典作品から借りてきたキャラクター達も丁寧に描写され見事だ。円城氏の文章、特に後半が抽象的で難解なうえに内容も混沌としていて読みづらいのは事実だが、初読時に比べれば理解が進んだように思う。

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