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ミステリの祭典

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怪奇小説傑作集2
英米編、創元推理文庫

作家 アンソロジー(出版社編)
出版日1969年03月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 mini
(2012/08/27 09:57登録)
発売中の創元「ミステリーズ! vol.54 AUGUST 2012」の特集は、”真夏の夜に楽しむファンタジー&怪奇の調べ”
夏に幻想と怪奇特集組むのは早川ミスマガの専売特許かと思ったら創元もやるんだな、早川には早川版、創元には創元版のアンソロジーで合わせよう

この創元の全集、1巻~3巻通じて古今東西ならぬ”古今英米”って感じでどの感も雑然としているんだよ、例えば内1巻はアメリカ作家のみで纏めるとか、古典作品だけの巻と20年代以降の巻とは分離するとか方法は有ったはず

まぁそれでも各巻の特色が全然無いかと言うと多少は有って、第1巻が古色蒼然気味とは言え古典的怪奇小説の代表作を集めていたのに対して、この第2巻では当時としては怪奇小説の新しい波であるモダンホラー作家を何作か入れて特色は出している
ただし新旧取り混ぜと言えば聞こえは良いが、アンソロジーとしてはやや雑然とはしている
この第2巻の特色であるモダンホラーだが、ハートリイ、コリア、カットナーなどはその典型的な作家達で、L・P・ハートリイ「ポドロ島」、ジョン・コリア「みどりの想い」の近代ホラーの名作2編を冒頭にもってきている
特にモダンホラーの代名詞とも言える作家L・P・ハートリイの「ポドロ島」は、最後にきっちり説明して終わらないと気が済まない読者には全く合わないが、このモヤモヤ感こそが魅力のモダンホラーでは必読の傑作である
ヘンリイ・カットナーは数多くの筆名を用いてジャンルを問わず書きまくった多作の作家で、ミステリー専門作家だとジョン・クリーシイみてえな奴だが、収録の「住宅問題」も多作とは思えぬほどイマジネーション豊かだ
どうしても最後にちゃんと説明して欲しいタイプの読者にお薦めなのが、S・H・アダムズの「テーブルを前にした死骸」
アダムズは本業が推理作家なので、本格派推理小説のようにちゃんと真相解明していますよ
この話、どこかで聞いたことがあるんだけどと思った貴方、もしかして稲川淳二では?、稲川センセ、この小説をパクったんじゃねえの?

まぁ概ね定番揃いだが、それだったらF・M・クロフォードは有名な「上段寝台」の方を収録して欲しかったかな、定番過ぎて避けたのかも知れんが
収録ワースト1はH・G・ウェルズの「卵型の水晶球」、これは怪奇小説的発想じゃなくてSFだと思う
もちろんSFっぽい怪奇小説なんてざらにあるが、両者の違いは人間の心理面に立脚しているかどうかだと私は思うが、収録のH・G・ウェルズ作品はSF的発想に偏り過ぎており、またプロットも纏まりが悪く時代を考慮したSF作品として見ても出来が悪い
こんなの収録するならウェルズの代わりに別な作家入れて欲しかったなぁ、例えばモダンホラーとの対比で古典派最後の大物怪奇作家といわれるH・R・ウェイクフィールドなどはぜひ収録して欲しかったな

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