江戸川乱歩全短篇<1>本格推理(1) 二銭銅貨・心理試験・恐ろしき錯誤・D坂の殺人事件・火縄銃・黒手組・夢遊病者の死・幽霊・指環・日記帳・接吻・モノグラム・算盤が恋を語る話・妻に失恋した男・盗難・断崖・兇器・疑惑・一枚の切符・二廃人・灰神楽・石榴 |
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作家 | 江戸川乱歩 |
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出版日 | 1998年05月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 1人 |
No.1 | 6点 | ミステリー三昧 | |
(2009/10/27 22:25登録) ※以前読んだ『二銭銅貨』『心理試験』『D坂の殺人事件』は評価対象外です。 <ちくま文庫>本格推理物に該当する短篇だけを集めた作品集です。江戸川乱歩氏特有の「奇妙な味」が薄い。故に印象が残りにくく、読んだ傍から忘れてしまいそうな作品が多いです。特に『黒手組』『幽霊』『指環』『接吻』は駄作に近いでしょう。 私的ベスト『断崖』『疑惑』『灰神楽』・・・「プロバビリティーの犯罪」の奥深さを知ることができ、安全性が高く知的なトリックであることが分かった。ただ「正当防衛に見せ掛けた計画的犯行」は手を汚していることになる気がしますが・・・ 次点は『恐ろしき錯誤』・・・復讐者が企てた計画の顛末を描いた作品です。思わぬケアレスミスによって自惚れから急転直下で発狂に陥る様が微笑ましい。「喜怒哀楽」の表現が起伏に富み、犯人の心境が際立つ倒叙型ミステリーとして高評価です。 また『日記帳』『算盤が恋を語る話』・・・横溝作品に登場する肉食系男子とは対照的の「内気な」草食系男子の恋物語を描いた作品です。恋相手に愛のメッセージとして「暗号を送る」という発想が不器用すぎる。皮肉にも数少ない「暗号」物として楽しめた。 他には『盗難』『一枚の切符』『石榴』・・・決定的な証拠が曖昧なため真相が覆りやすく締まりも悪い。それ故、ドンデン返しが繰り返されても「どうせ違うだろ?」という先入観が先走り驚きが少ない。そんなプロットはあまり好きではない。 『火縄銃』『兇器』・・・古典的なトリックを使った本格推理物で読みごたえがありましたが、トリックを海外古典から借用した点であまり高く評価したくない。 |