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ミステリの祭典

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重賞
競馬シリーズ

作家 ディック・フランシス
出版日1976年04月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 mini
(2010/04/26 09:52登録)
発売中の早川ミステリマガジン6月号の特集は”ディック・フランシスの弔祭”
パーカーに続いての追悼特集ってわけね

初期6作の内、未読の「飛越」「血統」は後のお楽しみにとっておくとして
第7作目の「罰金」から「利腕」の一つ前の第17作「試走」までの十余作は、フランシスが10年間決定打が打ち出せなかった空回り低迷期だと一般的に言われている
本当にそうなのか1冊試しに読んでみた
「重賞」は「利腕」の数作前の作品で、言われるところの低迷期真っ只中の作ではある
しかしこれがすご~く面白かった
低迷期なんて嘘だろ、と言うか、もしかすると初期作から入門したファンにとって、ベクトルが期待する方向性と違ってきているので、単に合わないだけなのではないか、とそう感じた
これは低迷期と言われる時期の他の作も読んでみる必要があるな
たしかにね、作者らしい”不屈の精神”というスピリットは希薄になっている
いやもちろん崇高な精神性は無くは無いんだけど、それは二の次で、面白さの源は純粋にスリラー小説的な部分に負っている
何て言うのか、とにかく読んでる最中が面白ければいいだろ、みたいな、割り切った開き直りさえ感じられる
特に良く似た馬が見つかる件など多分に御都合主義的な展開だし、ヒロインも友人も悪役までもが能天気で深みのある人物造形ではない
良い意味でストレートにただ物語として面白いだけ、読後に何らの感銘も残らない
でも面白いのだからそれでいいやという感じなのだ
作者の冒険小説的な精神性に期待するファンには明らかに方向性が違うが、この作家に何の思い入れも無く、ただ面白いスリラー小説を読みたいだけっていうドライな読者には向いている
あぁフランシスもこういうのも書くんだ、と変な感銘を受けたのであった

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