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ミステリの祭典

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不思議の国の悪意

作家 ルーファス・キング
出版日1999年08月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 mini
(2016/04/02 11:29登録)
論創社からルーファス・キング「緯度殺人事件」が刊行されたようだ、論創社ではひと月2冊刊行が続いていたが、今回もう1冊予定されていたバート・スパイサーの「ダークライト」は事情により来月に延期になったみたい、本邦初紹介ぽかったからちょっと残念

黄金時代のアメリカ本格派を代表するクイーンとキングと言えば、エラリーとそしてC・デイリー・キングである
ところがだ、キングには同時期に活躍し出身地も近い(姻戚関係の噂も有り)もう1人のキングが存在する、ルーファス・キングである
良くも悪くもアメリカン本格黄金時代の申し子のようなデイリー・キングに対し、例の森事典でも悪い意味で通俗調スリラーに流れてしまうという欠点が指摘されているのがルーファス・キングだ
その弱点をプラスに変えた代表作「不変の神の事件」は創元文庫で刊行済だ
今回論創から出た船上ミステリ「緯度殺人事件」は「不変の神の事件」よりも前の初期の作で、以前に黒白書房から抄訳で出ていたのだが、今回は論創から完訳版で登場という次第である
森事典では、「緯度殺人事件」はスリラー調に流れてしまう作者の癖が如実に出た悪例として採り上げられているがさてどうなんでしょう

その森事典では作者を人気作家に押し上げた長編よりも今では短編の方が評価が高いと指摘している
ルーファス・キングを代表する短編集が”クイーンの定員”にも選ばれた『不思議の国の悪意』なのである
この短編集は非常にヴァラエティに富んでおり、メルヘン風本格、クライム、倒叙、サスペンス、最後は館もののトリック本格など、個々の短編それぞれにテイストが異なり飽きさせない
ただ「死にたい奴は死なせろ」は80ページを超し、短編集全体の1/3を占める集中唯一の中編なのだが、この中編がねえ、つまり作者の長編の欠点というものを表している感じなんだよなぁ
前半の謎解きから後半は通俗調スリラーに流れていく
私は基本的に通俗だから駄目とは思わないし、スリラーが本格よりも程度が低いジャンルとも思わない読者だけれど、この中編ははっきり言って欠点と言われても仕方がないだろう
つまり中途で犯人が判明してからは、捻りも無い単なる追跡劇に終わっていて蛇足にしか思えない、長編での欠点というのはこんな感じを言うのだろうか
まぁ最初の被害者女性が襲われる場面の描写などには、叙述上の工夫が見られるのが最後まで読むと判明するのだけどね
他の短編群の出来の良さ、集中唯一の中編のイマイチな出来
やはりルーファス・キングの本領は長編よりも短編に有るというのは本当のようだ
採点上も7点付けたいが、唯一の中編が足を引っ張って1点減点とした

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