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ミステリの祭典

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二重裁判

作家 小杉健治
出版日1986年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 こう
(2008/09/14 02:52登録)
 日本では珍しい弁護士を主人公にした法廷ミステリの作品です。この作品は冤罪を被害者の家族側から描いた作品ですがそれに重きを置くのではなく主人公によって真相を明らかにするストーリーです。問題となるマスコミ、報道陣の所謂「推定有罪」についての批判が描かれていますが扇情的ではありません。
 無実の兄が獄中自殺したが刑が確定しているため社会からは「有罪」の扱われ方をしているが建前上は無罪で事件は終了し妹の再審請求は不可能であった。その真相を明らかにするために妹がとった手は、という展開のストーリーです。
 妹がとった手は非常に奇抜ですがそういう展開になったのは明らかに偶然だったのと結局ある人物の告白によって明らかにされるものの推理の余地はない点(というよりある人物の告白頼みになってしまっている点)、また現実にはこの兄の事件であれば冤罪にならずに釈放されそうな内容であり甘い点が多い気はします。また自殺の動機もよく考えればかなり独りよがりな所もあり自殺する必要があったかどうかも疑問に思います。
 日本では法廷ミステリが珍しい上に小杉健治の作品は事件の選び方がうまく個人的には好きな作家です。この作品もしみじみとした筆致で描かれている上品な作品で(描かれている人物は上品な人間ばかりではないのですが)読後感は良かったです。

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