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ミステリの祭典

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眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ

作家 平岡陽明
出版日2023年03月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 麝香福郎
(2025/02/19 21:08登録)
高岡周二は文化部所属の新聞記者。懇意にしている教授から、定年後に大学で講座を持たないかと勧められたが、本を書くことが条件だった。それも邪馬台国のような派手なテーマが良いという。そんな折アメリカの大学で、夢と睡眠の研究をしている甥のアスカが来日した。高宮から事情を聞いたアスカは邪馬台国の謎に興味を惹かれていく。
アスカが魏志倭人伝を読み解いていくのは定石通りだが、恣意的な読みを極力排除して進めていくのが好印象。さらに地政学的な見地から、当時の魏や倭国の周辺状況を推察して、邪馬台国の位置を比定していく手法が目新しい。
さらに高宮が抱える心の問題へのアプローチが、本書のもう一つの魅力になっている。高宮は愛妻を二年前に急病で亡くしたショックで精神に不安を抱えている。一方のアスカは、近年人気のないフロイト学説の一部を再生したいと思っており、高宮が最近よく見る夢を、フロイトのいう「検閲官」を引き合いにして分析する。高宮の見た夢から邪馬台国の場所と高宮の心の安寧のための二つの解が、同時に得られる離れ業が決まっている。

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