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ミステリの祭典

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虹の涯

作家 戸田義長
出版日2022年11月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 麝香福郎
(2024/12/15 22:26登録)
幕末の水戸藩の天狗党で首魁路だった藤田小四郎を探偵役に据えている連作集。
史実では、尊王攘夷派である天狗党は挙兵して失敗し関係者が小四郎を含めて軒並み処分され、影響力を失う。そんな悲しい未来が確定している小四郎は、各編で鋭い推理を披露し謎を解く。
父の死。蔵での密室殺人。商家での密室傷害事件。いずれの事件も真実に人の意志が薫る。白眉は最終話の「幾山河」。天狗党は上野で挙兵し、京都を目指す。道中の藩と戦闘しつつ、追ってくる幕府軍を警戒する中、武士たちが次々に惨殺されていく。
「化人」と称される殺人鬼に浮き足たつ天狗党は、上京し本懐を遂げられるのか。いかにもミステリめいた人工的な謎を、史実に制約される時代小説に巧く落とし込んでいるのが印象的だ。天狗党が末路とも言うべき最期を迎えるのを知りながら読むと、得も言われぬ虚しさ、もののあはれが込み上がてくる。

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