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ミステリの祭典

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死神を祀る

作家 大石大
出版日2022年05月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 麝香福郎
(2024/10/18 22:28登録)
舞台は東北の寂れた地方都市。雑木林の奥にひっそりと佇む神社は死神を祀っているという伝承があった。毎日欠かさず30日間続けて参拝すると、30日目の日付が変わる時に、この世のものとは思えないほどの恍惚を感じながら命を絶つことが出来る。
語り手が一話ごとに変わる6話とエピローグは、無事に死を迎える者もいれば、他人の参拝を止めさせるために奔走する者もおり、死神神社の正体を探り始める者もいる。それぞれの試みの意外な顛末が、ミステリの構造に乗せて語られていく。
特筆すべきは第三話「ゆがんだ顔」で描かれる謎。参拝を続けていた男が、ホテルのドアノブで首をくくり苦悶の表情で自殺した。しかも発見されたのは、男にとって参拝30日目の朝だった。あと少し待てば幸福な死が得られるはずだったのに、なぜ自ら命を絶ったのか。語り手となる刑事は、若い頃に別れずっと忘れられずにいた恋人の存在に辿り着く。そして真相が明かされた瞬間、淡く美しかった男の恋物語がどす黒く染まっていく。
死神神社を否定すべきかどうかには簡単には答えが出せない。安楽死や死の産業化、誰かに恋する気持ちを一刀両断で否定できないのと同じように。読み終えると、なんとも言えない感情が無数に渦巻く。

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