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ミステリの祭典

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鏡影劇場

作家 逢坂剛
出版日2020年09月
平均点6.00点
書評数1人

No.1 6点 麝香福郎
(2023/11/11 21:44登録)
ギタリストの倉石は、スペインで古い文書を購入した。裏に書かれた楽譜目当てだったが、彼の妻は文書とホフマンの関係に気付き友人でありドイツ語准教授でもある古閑沙帆に解読を依頼する。沙帆は倉石夫妻に相談の上、より適任であるドイツ文学者の本間鋭太に翻訳を委ねることとした。
構造がなかなか入り組んでいる。まず、本書全体としては本間鋭太から送られてきた原稿を、作者が少しだけ手直しして新潮社から出版したという設定になっている。その原稿の中身は二つに大別され、一方は本間が訳した例の古文書だ。こちらは文豪の日々を克明に綴ったものとして愉しめると同時に、書き手は誰かという謎にも心奪われる。もう一方は、沙帆の視点で原稿の翻訳依頼に伴う倉石家との交流が描かれている。こちらでは、沙帆が覚えた違和感や図らずとも抱え込んだ秘密などのじんわりとしたサスペンスが読み手の心を捉える。
そして最後の袋綴じに到達することになる。そしてこの中にさらにもう一段深く濃密なミステリが潜んでいることを知ることになる。

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