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ミステリの祭典

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風を彩る怪物

作家 逸木裕
出版日2022年06月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 麝香福郎
(2023/10/20 22:08登録)
第一章は、オルガン製作者の芦原幹と朋子父娘に出会い、卓越した音感を見込まれた陽菜は、父娘が製作中だったパイプオルガンの音色を整える作業を手伝うことに。フルートの練習の息抜きのつもりで応じたその作業だったが、想像以上に陽菜は夢中になっていく。フルートよりオルガン演奏や製作に自身の活路があるのでは、と感じ始めた陽菜に対し、幹は「あなたは自分を見失っている」と、NOを突き付ける。傷心のまま東京に戻った陽菜だったが、あるコンサートがきっかけで、幹の真意に気付く。そんな陽菜に届いたのは、幹の急死の知らせだった。
第二章は、朋子視点で語られる。幹の死後、製作途中のパイプオルガンはもちろんだが、謎の多い幹の死も朋子を苦しめる。
感性豊かで、好きなものがありすぎるせいで、自分のフルートを見つけあぐねていた陽菜と、オルガン作りしかしなかった朋子。二人がそれぞれに答えを見つけ出していくさまと、そこに並走するようにフルートとオルガンの音色が立ち上がってくるのがいい。
幹の死と、製作途中の「Pour T」の意味という二つの謎。さらにはオルガンという怪物ともう一つの怪物。全ての謎が解き明かされた時、胸に降りてくるのは、祝福のようなパイプオルガンの音色である。

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