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ミステリの祭典

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若冲

作家 澤田瞳子
出版日2015年04月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 麝香福郎
(2023/05/24 21:25登録)
妻を不幸にした後悔と、若冲の贋作を得意とした実在の絵師・市川君主との確執や相克が、若冲の偏執狂的なまでに緻密な描写や奇矯な構図を生んだという大胆なフィクションを描いている。
さらに、尊王派の公家が追放された宝暦事件、若冲の実家がある錦高倉市場と五条問屋町の訴訟、天明の大火といった史実を描くことで、若冲の葛藤に迫る芸術小説の中に、政治劇、経済小説、ミステリ、人情ものなど多彩なジャンルを織り込んでいる。
若冲が巻き込まれる事件を通して、弱者を平然と切り捨てる政治の非情、格差と差別の問題など、現代と共通する社会問題を浮かび上がらせているのも秀逸である。
心と社会の「闇」に翻弄された若冲が、最期に到達した境地は、若冲の絵が世代を超えて愛されている理由とも繋がり、深い感動を与えてくれるはずだ。

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