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ミステリの祭典

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とっぴんぱらりの風太郎

作家 万城目学
出版日2013年09月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 麝香福郎
(2019/07/17 21:09登録)
大阪の陣の時代を舞台に、忍者たちの青春を描いている。
訓練中のミスをとがめられ伊賀を追放された風太郎は、京都でニート生活を送っていた。そこに、かつて仲間だった黒弓が訪ねてくる。黒弓は、商人の伊賀者から渡されたひょうたんを、清水寺の近くに届けてほしいという。風太郎が配達を先延ばしにしていると、怪しい老人、因心居士が声をかけてくる。これを契機に、風太郎は豊臣と徳川が繰り広げる謀略戦に巻き込まれていく。
忍者を育てる柘植屋敷で学んだものの、武術も頭脳も人並みの風太郎は、徳川の天下が固まり、合戦が減る社会情勢の中で再就職が出来ず、忍者へ返り咲くことに淡い期待を抱いていた。
風太郎を取り巻く状況が現代の戯画になっているだけに、流されるままだった風太郎が、時に助け合い、時に敵対していた仲間と共に、自らの手で人生を切り開く決意を固める展開には、共感も大きいのではないか。
クライマックスには、風太郎たちが腕ききの忍者と戦う壮絶なアクションも用意されているが、この死闘は、風太郎たちの再生をかけた戦いでもあるので、読むと勇気をもらえるでしょう。

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