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ミステリの祭典

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死を呼ぶスカーフ

作家 ミニオン・G・エバハート
出版日2005年01月
平均点7.00点
書評数1人

No.1 7点 mini
(2016/05/31 09:57登録)
まだ全国的な取次状況にはばらつきがあるみたいだが、論創社からマックス・アフォード「闇と静謐」とミニオン・G・エバハート「嵐の館」が刊行される
見事予想通りアフォードは登録済だけどエバハートは完全無視ですね(笑)
当初はアフォードしか予定が分からなかったので、「百年祭の殺人」も持ってるので読もうかととも思っていたが、予定にエバハートが追加されたので急遽予定変更
アフォードなんて後回し、エバハートを優先だぁ

サスペンス小説の全盛期は戦後だが、戦前30年代の黄金時代にも人気を誇ったサスペンス小説のジャンルが有ったのだ、その名称は『もしも知ってさえいたら(HIBK)派』
この派閥の2大巨頭が大御所M・R・ラインハートとそしてもう1人ミニオン・G・エバハートである
ラインハートは今更説明の要もないくらいの大物作家であり、名前を知らないなんてのは本格派しか興味ありませんてな一部の視野の狭い読者だけである
しかしエバハートは翻訳も少ないしやや知名度は劣るかも
今回の「嵐の館」は久々の翻訳刊行で、現在入手容易なのは2冊共に論創だから、論創社はホント偉いよ、他では過去にポケミスなどにも翻訳作品が有るんだけど、古本値が意外と高いんだ
短編はアンソロジーで既読だったが、私も長編を読んだのはこの「死を呼ぶスカーフ」が初めてである
エバハートは決してマイナー作家なんかじゃない、女性としてはヘレン・マクロイなどと並んでMWAの会長職を務めた事も有る
MWAの会長職は案外と持ち回り名誉職的要素が強いので、一概に経験者全員が超メジャー作家でもないが、エバハートは後に巨匠賞も受賞しており、当時の人気作家なのが伺える
少なくとも世界的に見たらアフォードなんかよりずっとメジャー作家なのである

2大巨頭のもう1人、ラインハートと比較した場合、ラインハートの流麗でリーダビリティの高い文章に比べて、エバハートはやや癖が有り必ずしも読み易くはない
一方で謎解き面にあまり見るべきものが無いラインハートに対して、エバハートはかなり謎解き色が強く、この「死を呼ぶスカーフ」も中盤のサスペンスを除外して全体のプロットを追うなら、ジャンル投票で本格派に分類されてもおかしくはない
そりゃさ、ヒロインの性格はちょっと読んでて恥ずかしくなるようなゴシックロマンス風だけど、その一方で戦争の足音が近づく時代の軍用にも転用出来る飛行機メーカーとか産業スパイなどの話も出てきて舞台背景は意外とモダン
ヒロインの職業もニューヨークのモデルだし、この古くて新しい味わいが魅力である
実際にミステリ色の有るロマンス小説という分野は、現代でもサンドラ・ブラウンやリンダ・ハワードといった作家達が活躍しているのだから古い分野とは言えないでしょ

大体さぁ、そもそものHIBK派ってのが誤解されてるんだよ
例えばさ、戦後のウールリッチ=アイリッシュとか読むのに本格派としてどうとかの視点では読まないでしょ、一応はサスペンス小説だと念頭に置いて読むでしょ
ところがさ、ネット上でラインハートを酷評してる連中ってのはさ、普段は本格派しか興味無くてさ、ラインハートもやれ伏線がどうだとか事件関係者が証言を隠しているだとかの書評ばかりなんだ
HIBK派って基本サスペンス小説の一種なんだよ、名称の元になった作風も本来サスペンスの常套手段なわけでさ、登場人物が言うべき事を黙ったままでいるからサスペンスが生じるんだ(笑)
要するにサスペンス小説として面白ければいいんですよ、そう見ればラインハートなどは間違いなく当時の一流作家である
そしてエバハートもラインハートに勝るとも劣らない一流作家だと今回読んで確信した

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