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ミステリの祭典

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断罪のネバーモア

作家 市川憂人
出版日2022年02月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 6点 まさむね
(2023/01/02 21:55登録)
 時間軸を現在(または近未来)に置きつつ、「民営化された警察」を描くあたりが、まずはこの作家さんらしいところ。最終話までの各短編パートも悪くはないのだけれども、やっぱり最終話の展開が面白かったですね(3年ほど前の某ベストセラーを思い出したりもしましたけど)。ロジカルな面と警察小説的な面が上手く融合していると思いますね。
 一方で、最終盤で周りが皆で「主人公推し」になる展開って、昔の少年漫画を無理やり読まされたような印象もあって、その分採点はちょっとマイナスしておきます。

No.3 7点 HORNET
(2022/07/11 19:33登録)
 度重なる不祥事から警察組織が「民営化」された。ブラックIT企業で心を病み、民営化警察に転職した藪内唯歩は新米刑事として茨城県警刑事課で仲城流次をパートナーとし殺人事件の捜査にあたる。
 「足手まとい、お荷物」を自覚する唯歩だが、持ち前の真面目さと感性で、
凶悪事件を解決に導く。ところが、解決したと思われるそれぞれの事件の裏に、警察組織のきな臭い暗部が見え隠れする――。

 連作短編の形でまとめられているそれぞれの事件での唯歩の気づきからの推理はロジカルで、普通の本格短編として楽しめる。そのうえ、作品全体を通しての仕掛けが施されており(最近よくある手法であはあるが)、よく考えられており楽しませてくれた。
 唯歩を取り巻く刑事課の面々との関係性でも心地よいラストが用意されており、読後感もよい。
 「漣&マリアシリーズ」でおなじみの筆者、毛色の違う他作でもその才を十分に発揮されている。

No.2 7点 人並由真
(2022/06/10 14:50登録)
(ネタバレなし)
 旧世紀からの不祥事に端を発し、国内の警察組織に大改革が為された21世紀。過酷な他職業の職場を経て、今はつくばの新米刑事となった20代半ばの女性・薮内唯歩(やぶうちゆいほ)は、先輩の警部補・仲城流次(なかじょうりゅうじ)とともに地元のアパートで起きた殺人事件を捜査する。やがて犯人を検挙する彼らだが、唯歩の前には予測もつかない現実の迷宮が広がっていた。

 現実の並行世界的なIF設定で警察小説を書いて、しかもかなり技巧的なパズラーにしてあるところはこの人らしい……というか、そういう大枠だけ書くと、マリア&漣シリーズとおんなじだな(笑)。いずれにしろ、今回はもっともっと警察小説寄りである。

 話の構造についてはあまり書かない方がいい作品だけど、終盤の推理のロジック&トリックの開陳と、サプライズの波状攻撃はやはりいかにもこの作者。

 とはいえ真犯人のある行動についての動機については、現実の日本の政治に一家言ありそうな作者だけに、ちょっと変わってぶっとんた(?)ホワイダニットの解法を予測していた。結局、外れたが。

 今回も詰め込み過ぎな仕上がりという印象はあるが、この出版不況のさなか、作家性を出すために、作者が自分で自分のアベレージを上げてしまっている感が強い。単に読んで楽しむ方としては有難いばかりだけど、書き手は相当にキビシイだろうなあと予見する。
 いい意味で、今後の作風のチェンジアップを望みたい気も(汗)。

No.1 6点 虫暮部
(2022/04/26 13:18登録)
 色々頑張っているのは判る。ただ、細かい部品が多過ぎて、組み立てた時に、全体のフォルムに驚くのと、細部の巧緻さを愛でるのと、両立しがたい感じ? 作品の欠点ではなく、あくまで私とはちょっと合わなかったと言うことで。
 最後に出て来る犯人の毒を吐くキャラクターは良かった。

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