皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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糸色女少さん |
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平均点: 6.42点 | 書評数: 160件 |
No.2 | 7点 | 息吹- テッド・チャン | 2022/04/23 22:58 |
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自分の未来が分かったとしたならどうするかという問いは、使い古された感さえもあるが、テッド・チャンの手に掛かれば、そこにはまだまだ美しい物語や時間と人間の関係についての新たな理解を見出し得ることが明らかにされる。
人間と人間、人間と他の生き物、この宇宙と他の宇宙での出来事と並べてみるとひどく異なるテーマのように思える。しかし他人の心の中も、他の生き物の思考も、他の宇宙の出来事も本質的には読者の想像の中でしか到達できないという意味では同じである。 想像し、考え続けることによって、他の存在より深く理解出来るようになること。進歩が常に良いものばかりではないことを踏まえたうえで、それでも今がより良く成り得ること。その可能性が存在することを、実例を提示することで示している。 |
No.1 | 8点 | あなたの人生の物語- テッド・チャン | 2021/07/13 22:59 |
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「人類とは本質的に異なる知性を、いかに異なるかが理解できるように描く」という難題を成し遂げたうえで全体を感動の物語に仕上げた表題作をはじめ、文字通りに天まで届く塔の建築現場を生活感あふれる筆致で描写する「バビロンの塔」、機械ではなくゴーレムにより産業革命が起きたもうひとつのイギリスを舞台とする「七十二文字」、神が顕現し奇蹟が日常のものとなっている世界における信仰のあり方を考察する「地獄とは神の不在なり」など全八篇。
どれもみな、一級の奇想に徹底した論理展開で肉付けし、ふさわしいドラマに乗せて適切な文体で語った隙のない作品ばかり。 |