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Akeruさん
平均点: 4.57点 書評数: 21件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2 7点 死のドレスを花婿に- ピエール・ルメートル 2018/07/24 19:29
この作者の作品の中でも、起承転結の出来なら随一だろう。
中盤やや中だるみがするので、そこは読み飛ばせば良い。 気分が悪くなるだけで得るものは少ない。
総じて、私見だが、この作品は「その女アレックス」は越えた。
だが訳がよくない。
原文を浚ったわけではないから、詳しいことは言及しない。ただ無生物主語構文と三人称視点の文章の繋ぎ目が不自然に思えるし、そもそも文章全体からいわゆる「文学み」が減じられているように見える。 勿論、個人の感想だ。
どうもカミーユヴェルーヴェンシリーズの訳者は三島由紀夫にかぶれたような文章を書いていた。 そこが好きだったのだが、こっちの訳者はそうではない。
残念だ。

No.1 7点 悲しみのイレーヌ- ピエール・ルメートル 2018/07/12 00:10
このシリーズは「悲しみのイレーヌ」→「その女アレックス」→「傷だらけのカミーユ」の三部作になっているが、実質のところ2部作に近い。
何が言いたいのかというと、「悲しみのイレーヌ」と「傷だらけのカミーユ」は姉妹作なのだが、「その女アレックス」は浮いてしまってる。
この中では図抜けて「その女アレックス」の評判が良いが、これは2作目であり、「じゃあ1作目の「悲しみのイレーヌ」から順番に読むか」などと思ってると罠にかかる。
つまり、1作目の「悲しみのイレーヌ」と3作目の「傷だらけのカミーユ」を読むための間隔を開けるべきではない。
連続して3作を短期間に読むのが理想的だが、それが出来ないのではれば「その女アレックス」を先頭、ないし最後に持ってくることを強く勧めておく。

また、この作者はとにかく表現が上手い。 文学的、と端的に評してもいいが、皆様の中には「文学的」と聞くと、表現を華美にしすぎた結果、むしろ滑った文章を思い起こす人もいるのではないだろうか。
だがしかし、この作者に関してはそれが一切ない。
絢爛豪華ではないのだが、的を外すことのない人物、心情描写には瞠目した。 またそこから同時に訳者の実力の高さも伺える。
半面、ストーリーに関しては手放しで褒めることはできない。 処女作の「悲しみのイレーヌ」に関してはほぼほぼ陳腐とけなしてもいいような内容で、「その女アレックス」はヒネリを効かせてサスペンス的なワクワクを加味した点までは認めるが、プロット自体に賛辞を贈る気にはならない。 そして「傷だらけのカミーユ」はそれら二つから更に一段階落ちる。
だが、いずれも「文章に目を通すこと自体が悦びになる」ような作品ばかりで、図らずも三部作全てを一気読みしてしまった。

ピエール・ルメートルは「この10年で最も着目するべき推理作家」の一団に入ることはほぼ間違いないように思われる。

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Akeruさん
ひとこと
低評価ばかりつけてるように見えますが、高評価だった本に関してはわざわざレビューしない方針をとってます。 あしからず。
好きな作家
採点傾向
平均点: 4.57点   採点数: 21件
採点の多い作家(TOP10)
マーサ・グライムズ(4)
レイモンド・チャンドラー(2)
ピエール・ルメートル(2)
ドロシー・L・セイヤーズ(2)