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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1160件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1060 7点 逆転美人- 藤崎翔 2023/03/07 21:52
 採点も含めて書評が難しい作品。余計な事前知識なく、素直に読み進めた方が楽しめる作品であることは間違いないでしょう。

【以下、余計な事前知識となる可能性があるのでご注意ください】
 肝となる点については、確かに先例というべき複数の作品が思い浮かびますし、「史上初の伝説級のトリック」なのかと問われれば、消極的な評価。一方で、ソレを施した必要性をストーリーとして巧く結びつけた点については評価したいと思います。一捻りした後の肝突入、という展開も嫌いじゃない。こういった系統を読むのも久方ぶりで、刺激に?なりました。評価は分かれると思いますが、記憶には残りそうな作品です。

No.1059 8点 仕掛島- 東川篤哉 2023/03/02 22:23
 ド直球の本格作品と言ってよいと思いますし、愛すべきバカミス系でもあります。斬新なトリックが…という訳ではないものの、過去の事件との関係も含めてしっかりと練られていて、最後まで楽しく読ませていただきました。新鮮味というよりも、安定感で勝負といったところか。個人的には、結構好きなタイプの作品。
 ちなみに、ユーモア度については、作者の他作品と比べれば低めかも。でも、内容的にもこの辺りが丁度いいような気がしますね。読み心地は大変に良かったです。

No.1058 5点 化学探偵Mrキュリー9- 喜多喜久 2023/02/23 23:29
 シリーズ9作目。続いてますねぇ。
 大学庶務課職員・七瀬舞衣とMr.キュリーこと沖野准教授のコンビも、2年4ヵ月という設定らしい。二人の雰囲気はもとより、七瀬の社会人としての成長が垣間見えて微笑ましい。
 ミステリとしては総じて薄味ながら、三話目の「化学探偵とフィクションの罠」はちょっとした捻りもあって良かったかな。

No.1057 5点 珈琲店タレーランの事件簿8- 岡崎琢磨 2023/02/13 23:37
 京都市内で新たなコーヒーの飲み比べイベントが開催されるとのことで、珈琲店「タレーラン」にも出店依頼が。過去の関西バリスタ大会での事件も頭をよぎる中、2日連続で妨害事件が発生して…という展開。
 ミステリとしては薄味。シリーズものとして捉えたとしても、バリスタ兼店長の切間美星とアオヤマの関係を含めて、どうにも面倒な人たちが揃っているなぁ…という印象。
 このシリーズも10周年とのことで、新展開を期待したのだけれども、結果としては少し残念。読み心地は悪くなかったのですが。

No.1056 7点 私の頭が正常であったなら- 山白朝子 2023/02/10 21:12
 このサイトでの評判が良かったことから手にしてみたのですが、読んで正解でした。主人公の多くは大切な何かを失った方でしたが、救いのようなものも感じることができて、結構沁みましたね。マイベストは「首なし鶏、夜をゆく」ですが、他の短編もイイです。

No.1055 5点 いけないII- 道尾秀介 2023/02/04 19:13
 連作短編。「その写真を見たとき、物語は一変する」という謳い文句で、各短編終了後に写真が示される構成。直ぐには気付かなくても、その後の短編を読み進めていくうちに、真相に気付けるような配慮はなされています。
 作品の趣旨はよくわかるし、嫌いではないのだけれども、正直、写真を見せられた時の驚きが希薄というか、個人的にはカタルシスが得られなかったです…。私の読み方が悪いのかもしれませんが…。
 好き嫌いの評価は分かれるような気がします。あまりにも理不尽な哀しみを背負う方が多いのも、個人的には辛かった。

No.1054 7点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 2023/01/29 20:52
 作者のこれまでの特徴であるエログロは、ほぼ封印(でも、決して「嘔吐物」などとは表記せず、「げぼ」で通すところは作者の拘り?でしょうか)。封印しながらのこの展開&結末は、素直に素晴らしいと思います。カルト宗教を舞台とした効果が絶大、というか、だからこその舞台設定であって感心しました。そもそも、実際の事件をモチーフにしたこと自体が効果的。
 無駄のない巧さに感心しつつ、一方で何だろう、ロジックとは違う面でもの悲しさを感じたりもしたので、7~8点の気持ちの中で、この採点とさせていただきます。

No.1053 7点 廃遊園地の殺人- 斜線堂有紀 2023/01/22 19:49
 プレオープンの際の銃乱射事件により廃園に追い込まれた遊園地「イリュジオンランド」を舞台にした、ド直球の本格作品。廃園後20年を経て招待されたメンバーの顔触れからして、堪らない王道の薫り(?)が漂ってきます。終盤になって、自分の中で何やらごちゃごちゃしてしまった面はあるのですが(まぁ私のせいなのでしょうが)、よく考えられた作品だと思います。廃遊園地という舞台設定も好印象で、優等生な本格パズラー。
 ちなみに、冒頭シーンの表記についてはsophiaさんと全く同じ意見です。その件に関する真相判明後、即「あれ?」と読み返し、「うーむ」と首を捻った次第であります。

No.1052 7点 コージーボーイズ、あるいは消えた居酒屋の謎- 笛吹太郎 2023/01/15 18:27
 荻窪のカフェ「アンブル」で月に一度開催される「コージーボーイズの集い」。それは、コージーミステリ好きな出版関係者が、お茶とケーキを囲んでゆるゆるとミステリ談義を行う催し。メンバーやゲストから謎が持ち込まれ、皆で推理合戦。メンバーの推理が行き詰まったところでカフェのマスターが…という展開の短編集。
 「コージーミステリとは何か」と明確に説明できる知識は自分にはないものの、この作品がその範疇のど真ん中で、かつ良質であろうことは理解できます。ユーモアもあって極めて読みやすく、終盤にアッと言わせる手腕は素直に素晴らしい。重厚な本格作品や派手なエンタメ作品も好きなのだけれど、単品で唸らせるこういった作品集もやっぱりイイ。軽みの中の奥行きの妙。
 マイベストは、昨夜自分が行った居酒屋(酔いすぎて覚えていない)を探す表題作か。アレルギーの謎も好きなタイプだけど、途中で気付いてしまう方もいらっしゃるかも。

No.1051 7点 マスカレード・ゲーム- 東野圭吾 2023/01/10 21:19
 ホテル・コルテシア東京を舞台としたシリーズ第4弾。警部となった新田浩介は、またまたホテルマンを装い、潜入捜査を開始します。ロサンゼルスから呼び寄せられた山岸尚美とのコンビも復活。
 まぁ、巧い。論理的に犯人を突き止めるという構成ではないため、好き嫌いはあろうかと思うのですが、物語を紡ぐ作者の力量は流石で、次々にページをめくらされました。最後の最後まで楽しめましたね。
 シリーズを通じての新田&山岸の人間的な成熟も好ましく読んだのですが、さてさてこのシリーズの今後は?

No.1050 6点 探偵少女アリサの事件簿 さらば南武線 - 東川篤哉 2023/01/08 21:22
 名探偵として世界に名をはせる母と、国内では有名な探偵らしい父を持つ、10歳の美少女・有紗(アリサ)。多忙な両親不在の際に、アリサの子守役を依頼される便利屋、31歳の橘良太。この2人のコンビで溝の口周辺の事件を解決していく連作短編集の第3弾。そしてシリーズ完結編。
 4短編を収録。いずれも本格ミステリとしての根幹は守っています。でも出来栄えはマチマチ。個人的には、2話目の「名探偵、金庫破りの謎に挑む」に好感。
 アリサの両親も含めて拡張させやすい設定だろうなぁと思っていたし、読み心地もよかったので、この作品がシリーズ最終巻となったことは正直残念。このシリーズは「10歳のアリサの1年間」を描いたともいえるので、何らかの形で「その後」を読んでみたいものですが、無理なのかなぁ。

No.1049 6点 断罪のネバーモア- 市川憂人 2023/01/02 21:55
 時間軸を現在(または近未来)に置きつつ、「民営化された警察」を描くあたりが、まずはこの作家さんらしいところ。最終話までの各短編パートも悪くはないのだけれども、やっぱり最終話の展開が面白かったですね(3年ほど前の某ベストセラーを思い出したりもしましたけど)。ロジカルな面と警察小説的な面が上手く融合していると思いますね。
 一方で、最終盤で周りが皆で「主人公推し」になる展開って、昔の少年漫画を無理やり読まされたような印象もあって、その分採点はちょっとマイナスしておきます。

No.1048 6点 完全恋愛- 牧薩次 2022/12/29 23:17
 戦中から平成に至る洋画家の一代記として見れば、その時代の出来事とも相まって、なかなか読み応えがあると思います。
 3つの事件も悪くはないのだけれど、2つ目の事件の凶器はどこに消えた?とか、3つ目のアレはどうなの…とか、突っ込みたくなる点も。何より、1話目終了時点で、大ネタが比較的容易に想定できてしまう(むしろ、ミスリードなのかと逆に怪しんでしまったくらい)点が惜しい。力作ではあります。

No.1047 5点 放送禁止- 長江俊和 2022/12/24 08:39
 2003年からフジテレビ系列で不定期放送されたテレビドラマを元に書かれたルポルタージュ風の小説。テレビドラマは「ある事情で放送禁止となったVTRを再編集し放送する」という設定で放映されたようですね。「あなたには隠された真実が見えるか?」が読みどころ(なのでしょう)。
 3短編が収録されているのですが、判りやすいものもあれば、ちょっと文章のみでは辛い(伏線が見えにくい)作品もありました。結局はドラマ版のネタバレサイトで確認しちゃったりして…。ルポルタージュ風でスイスイ読めたのは良いのだけれど、映像の方がきっと楽しめたのだろうなぁ…というのが率直な感想です。

No.1046 5点 やっぱりミステリなふたり- 太田忠司 2022/12/19 21:58
 京堂夫妻シリーズの短編集。各作品がコンパクトでスキマ読書には悪くないのだけれど、コンパクトな分、結末は見えやすいかも。登場人物も限られてきますしね。それを避けようとすればするほど、無理のある流れになってしまう。致し方ないのだけれども、何か勿体ないような気がします。

No.1045 7点 invert II 覗き窓の死角- 相沢沙呼 2022/12/12 23:22
 中編(生者の言伝)と長編(覗き窓の死角)の2作品で構成されています。
 「生者の言伝」は、終盤の展開がいかにも作者らしい。「覗き窓の死角」は、むむむ、そう来たかといったところ(巧いことしてやられた感もある)。両作品とも倒叙ミステリとして良質、とは言えると思います。
 一方で、これはシリーズ一作目の展開からやむを得ないのでしょうが、衝撃度という点ではシリーズを追うごとに減少しています。シリーズはまだ続きそうですし、自分としては、期待のステージを過度に上げず、質が確保された倒叙ミステリとして、ついでに城塚翡翠の過去の開陳も少しだけ期待しながら、次作を待つことにします。(ちなみに、個人的には城塚翡翠、あまり好きになれない…)

No.1044 6点 密室から黒猫を取り出す方法- 北山猛邦 2022/12/08 21:49
 気弱で引きこもりがちな名探偵シリーズ第2弾。5つの短編が収録されていますが、出来栄えはマチマチか。
 マイベストは「停電から夜明けまで」。暗闇の使い方が秀逸ですし、色々な意味で最も「音野」の名探偵ぶりを感じることができます。最終話「クローズド・キャンドル」のトリックも何気に好きなのですが、犯人の特定にもうひと捻り欲しかったところ。(でもこの分量の短編では求めすぎかな?)

No.1043 7点 ぼぎわんが、来る- 澤村伊智 2022/12/03 21:56
 家族に強く勧められて読んでみたのですが、大正解でした。ズバリ面白い。他の方も述べられていますが、まずは章立てが絶妙です。「ぼぎわん」の怖さもさることながら、次第に真相(?)に迫っていく過程が良かった。深みもあります。
 日本ホラー小説大賞受賞作で、選考委員(綾辻行人・宮部みゆき・貴志祐介)全員が絶賛したとのこと。デビュー作でこのレベルは、素晴らしいと思いますね。家族の評によれば、シリーズ続編はさらに良作とのこと。続編も読むことになりそうです。

No.1042 6点 スケルトン・キー- 道尾秀介 2022/11/26 22:00
 サイコパスのお話。作者らしい仕掛けはあるのだけれど、サイコパス多すぎだし、死にすぎだし、ちょっと自分には合わない面も。ラストに少しだけ救われたかな。

No.1041 7点 #真相をお話しします- 結城真一郎 2022/11/26 21:58
 マイベストは、日本推理作家協会賞短編部門を受賞した「#拡散希望」。読後、とある米映画を思い出しましたね。世相を表してもいます。
 次点が「パンドラ」。5つの収録短編中、展開的には最も落ち着いている(地味?)と言えますが、深く考えさせられる作品でした。
 他の3作品「惨者面談」、「ヤリモク」、「三角奸計」は、水準級といったところ。結末が想定しやすい面もあったかな。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1160件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
伊坂幸太郎(26)
道尾秀介(26)
島田荘司(23)
米澤穂信(22)
歌野晶午(21)
倉知淳(19)