海外/国内ミステリ小説の投稿型書評サイト
皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止 していません。ご注意を!

まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1160件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.1160 6点 逆転正義- 下村敦史 2024/05/14 21:44
 6編が収録された短編集。個々の短編はメッセージ性も含めて好きなタイプなのですが、一貫する系統が見えてしまう分、続けて読むとどうかなぁ、という面もあります。①、⑤、⑥あたりに、作者の意思(主張?)が強く表れているのだと思います。
①見て見ぬふり:時代を反映した作品。
②保護:おっと、見事にやられました。2作目に配置したのは正解。
③完黙:本作品の中では最も凡庸か。
④ストーカー:少なくともポイントの一つは容易に気づくかも。
⑤罪の相続:恨みの連鎖という、古から現代に繋がる課題。
⑥死は朝、羽ばたく:ふむ。突っ込みたい点や、①や⑤と重複する部分もあるけれど、短編集の締めとして好印象。

No.1159 6点 ブラック・ショーマンと覚醒する女たち- 東野圭吾 2024/05/12 22:24
 シリーズ第2弾。今回は短編集ですね。
 元マジシャンの神尾武史は、隠れ家的なバー「トラップハンド」のマスターに。姪の真世や客が持ち込む案件を…という流れです。全体に小粒との印象もありますが、「相続人を宿す女」には考えさせられましたし、「リノベの女」の続編も含めた流れだとか、「査定する女」への繋がりは。流石のストーリーテラーぶり。
 ちなみに武史は、前作よりも何やら格好よくなっている気がします。もしかしてドラマ化あります?

No.1158 5点 嘘でもいいから誘拐事件- 島田荘司 2024/05/09 23:04
 島荘には珍しい、コメディ・タッチの中編2本。会話部分が多いこともあって、あっという間に読了できます。
 作者があとがきで「もしかするとこのシリーズは、僕にとって、最も一人よがりでない、最も肩の力の抜けた、最も読者本位の、正しいミステリーなのかもしれない」と語っているとおり、決して肩肘張らず、楽しんで書いている様が伺えます。この点ではなかなか興味深かったですね。
 内容はというと…、ゴンドラからの人間消失であるとか、謎自体は作者らしいと言えるのかもしれませんが、まぁ、大きな期待はしない方がいいかも。島荘のユーモアを気楽に楽しもうということで。

No.1157 6点 帝国妖人伝- 伊吹亜門 2024/05/06 21:41
 明治~太平洋戦争終了直後までの時代背景を活かした連作短編。
 売れない作家那珂川二坊が出会う5つの事件、その探偵役を務める五人の「妖人」の姿が読みどころ。各偉人(妖人)は誰なのかと想像するのも楽しいし、ストーリーへの偉人の絡め方も流石です。一方で、各事件の本格度は控えめ。歴史好きの方によりフィットするかも。

No.1156 8点 木挽町のあだ討ち- 永井紗耶子 2024/05/03 07:58
 舞台は江戸。木挽町にある芝居小屋のそばで、若衆による仇討ちが成された。その2年後、別の若侍が木挽町を訪れ、芝居に関わる複数の者たちから事件に関する話を聞いて回る…。
 それぞれの語り手によって次第に事件の背景が見えてくる構成自体は、特段目新しいものではありませんが、それぞれの半生をも語らせているところがポイントで、グイグイ読まされます。結末は想定しやすいかもしれませんが、既にそういった視点のみで読ませていない上手さがあります。
 純粋に良い小説を読ませていただきました。直木賞と山本周五郎賞のW受賞も納得です。

No.1155 7点 ミステリー・オーバードーズ- 白井智之 2024/04/27 23:14
 バラエティに富んだ短編集で、本格度も高いです。白井度は作品によって格差アリ。耐性が無くても意外にイケるかも(責任はとれないけど)。
①グルメ探偵が消えた
 舞台は英国。失踪したグルメ探偵の行方を追うお話。翻訳調の語り口が珍しいなぁ…と感じつつも、ラストはやはり白井智之。
②げろがげり、げりがげろ
 タイトルからして白井智之。でも読み進めるほど、内容に即した、秀逸なタイトルであると気付く。ちょっと笑える、作者らしい特殊設定ミステリ。
③隣の部屋の女
 心理サスペンス風。多くは書かないけれど、作者としては珍しい展開。
④ちびまんとジャンボ
 本格度の高さとハチャメチャな内容のコラボが雑妙な味を醸し出している。作者らしさ全開。
⑤ディティクティブ・オーバードーズ』
 これは斬新。複数の「信頼できない語り手」から犯人を絞り込むロジックが見事。

No.1154 6点 村でいちばんの首吊りの木- 辻真先 2024/04/15 23:10
 短編集。大技が炸裂するものではないですが、作者が各短編に込めたメッセージも含め、意義深く読ませていただきました。特に表題作は、作者にとって思い出深い作だそうですので、益々意義深い。
①村でいちばんの首吊りの木
 謎の一部は「ありがち」だけれど、ラストの次男の考察には結構びっくり。
②街でいちばんの幸福な家族
 結末が何となく予測できるとは言え、軽快な展開が好印象。良かった。
③島でいちばんの鳴き砂の浜
 ミステリとしては平板。でも語り手の無主物たちの語りが結構楽しい。

No.1153 5点 博士はオカルトを信じない - 東川篤哉 2024/04/13 15:10
 (自称)天才発明家のアラサー女性博士と、両親が探偵事務所を経営している中2男子のコンビによる短編集。新シリーズとはいえ、何かどこかで見かけた雰囲気ですし、東山節も健在。コンビが変わっただけ?という気がしないでもない。
 スラスラ読みやすいのですが、トリックは相当に小粒。すごく小粒。その中でも、最終話「天才博士と靴跡のアリバイ」の発想は嫌いではないです。

No.1152 6点 蔭桔梗- 泡坂妻夫 2024/04/07 16:20
 大人の恋愛を描いた短編集。ミステリの側面を期待して読むと肩透かしかもしれませんが、こういった短編集も悪くない。11篇で構成。印象に残った作品の短評を。
「遺影」:おっ、そう来たかという作品。全篇読み切ったうえで振り返ると、この短編集の中で特異的とも言える。
「簪」:それぞれの人情が沁みる。
「蔭桔梗」:職人と職人を取り巻く方々の心意気が響く。
「十一月五日」:歯医者のシーンから始まる構成の妙。
「竜田川」:最もミステリに近いか。
「くれまどう」:夫婦とは何かを問う短編。

No.1151 8点 地雷グリコ- 青崎有吾 2024/04/04 20:31
 まずは、対戦するゲームの設定が絶妙です。じゃんけんグリコ、神経衰弱、だるまさんが転んだなど馴染み深い遊びをベースとして、それに追加されるルールもさほど複雑ではないので、面倒くさがりな私でも、スッと頭に入ってきます。だからこそ、ゲームの奥深さも理解しやすい。
 射守矢真兎の快進撃?に爽快感を抱きながらの、中盤以降の展開も好印象。頭脳戦のみならず、ルールの隅を突く戦略や心理戦の要素が抜群に面白かった。どの短編も楽しめたのですが、特に「自由律ジャンケン」と「フォールーム・ポーカー」が良かったかな。

No.1150 7点 爆弾- 呉勝浩 2024/03/26 23:04
 微罪で警察に連行され、取調室で秋葉原の爆発を「予言」した中年男性。自らを「スズキタゴサク」と名乗り、霊感が云々、記憶がない云々を語る、この人物のキャラがすごい。
 彼は何者なのか、目的は何なのか。次の爆発を防がんとする警察との頭脳戦を経て、その全景が見えてくるのか…という興味でグイグイ読まされました。サスペンスとしても、警察小説としてもレベルが高いと思います。

No.1149 5点 マイクロスパイ・アンサンブル- 伊坂幸太郎 2024/03/20 11:28
 もともとは、猪苗代湖を舞台とした音楽イベントの来場者に小冊子として配られた短編小説。イベントが毎年開催された結果、7年間で1冊の本にまとまったようです。
 そういった経緯もあるからなのか、全体として見ると多少散漫な印象もございますが、お伽噺と現実世界との組み合わせ方は伊坂さんらしいし、温かい気持ちにさせてくれました。

No.1148 6点 五覚堂の殺人~Burning Ship~- 周木律 2024/03/16 23:15
 堂シリーズ第三弾。今回も「館×数学」ミステリであります。
 前作を読んでから随分と月日が経ってしまったので、人物設定があやふやなまま読み進める形になったのですが、やっぱり某作者の某シリーズが思い浮かんじゃいますよねぇ。まぁいいけど。
 密室のうち一つは、本当にできるのかという意味で、驚きました。でも、これは一般的な読者には分からないと思いますね。また、とある登場人物の特性については、「なぜ明言しない。なぜぼかす。何を狙っているのか?」と疑心暗鬼に。最終的には「そのままかい!」と、むしろ清々しく突っ込めます。
 数学を介してはいるものの、全体としてはオーソドックスな館ものという印象。時間軸の設定等も面白かったかな。

No.1147 6点 聖母- 秋吉理香子 2024/03/10 22:46
 単にトリックとしてということではなく、テーマとの結び付け方も含めて、非常に上手く組み立てられていると思います。
 一方で、「分かりやすそうだけど全体像として結びつかない…」という思いを継続しながら読み進めた割に、読後の(ある意味での)爽快感は思ったほどではなかったかな…という印象も。帯の惹起文言が悪影響を及ぼしているような気もするのですが…。

No.1146 7点 午後のチャイムが鳴るまでは- 阿津川辰海 2024/03/04 21:25
 馬鹿馬鹿しいことに情熱を注ぐこの高校生たちは、馬鹿だ。お前は当時どうだったかって?ええ、勿論、馬鹿でした。懐かしくて愛おしい奴らだなぁ。「あの頃に戻りたいなぁ」と久方ぶりに思えた青春ミステリでした。
 こういった高校生たちの描写も含めて、上手い作品です。短編単独ではフィットしなくても、高校時代を思い起こしながら読み進めるのが吉。ラーメンも旨そうだったし。
 ちなみに、「Bでも仕方がない」とう言い回しは、少なくとも私は、「AでもBでも仕方がない(AもBもダメ)」という意味ではなく、「AはダメなのでBでも仕方がない(AはダメなのでBでもやむを得ない)」という意味で使いますねぇ。つまりは「次善の策」。虫暮部さんの別解には感銘を受けました。

No.1145 6点 ハッピーエンドにさよならを- 歌野晶午 2024/02/28 23:32
 11篇からなる短編集。出来栄えは作品によってマチマチな印象。タイトルどおり、どの短編もハッピーエンドとは無縁ですが、社会問題を絡めつつ考えさせられる短編も複数ございました。
①おねえちゃん:悲しい話ですなぁ。
②サクラチル:ストンと落とされた。
③天国の兄に一筆啓上:凡作と言わざるを得ない掌編。
④消された15番:正直、ピンとこなかった。
⑤死面:過去の真相の想定はつくが、ラストの一ひねりは作者らしい。
⑥防疫:最後の言葉が効いている。
⑦玉川上死:ミステリ的な側面は最も強いが、序盤で想定ができる面も。
⑧殺人休暇:ラストの1行がいい。自分も読中そう思った。
⑨永遠の契り:バッドエンドとはいえ、思わず笑ってしまった掌編。
⑩In the lap of the mother:この掌編も苦笑い。パチンコは怖い。
⑪尊厳、死:人の尊厳とは。なかなか深い。

No.1144 6点 神酒クリニックで乾杯を- 知念実希人 2024/02/24 19:01
 ゴリゴリの医療ミステリかと勝手に勘違いしていました。ライトなサスペンスといった感じでしたね。
 雰囲気としては悪くなく、一気に読まされました。一方で、反転を織り込みつつ真相に迫っていく展開に、良くも悪くも「優等生」的な印象を受けたことも事実。極端なキャラ設定も好き嫌いが分かれるか。切り上げてこの採点。

No.1143 4点 変な家- 雨穴 2024/02/21 23:06
 作者の作品は「変な絵」を先に読んでいて、意外に?楽しく読ませていただいたことから、話題のデビュー作もそのうち読んでみようか…と考えておりました。最近文庫化されたことを機に、ようやく手にした次第です。
 で、正直、積極的な評価はしにくいですねぇ。間取り図が関係するのは前半だけで、後半は親族関係が複雑化されたたうえ、単に結論を読まされただけという感じ。内容的にも強引すぎはしないか。文庫版では、栗原設計士による「文庫版あとがき」も追加収録されていたのですが、これまた微妙でした。
 一方で、冒頭で触れたように、2作目の「変な絵」は良かった。ということは、この間で確実な進化があったとも捉えられる訳で、最新作「変な家2~11の間取り図~」に手を出してみる価値はあるのではないかと、考えているところです。

No.1142 7点 案山子の村の殺人- 楠谷佑 2024/02/20 23:01
 従兄弟で合作推理小説を書いている大学生コンビが、秩父の山奥の村で遭遇した殺人事件。奇をてらわないクラシック・スタイルの本格モノで、好感を持たれる同志の方も多いと思います。登場人物の造詣も上手く、ストレスなく読み進められます。密室の謎は小粒かもしれませんが、ミスディレクションには感心。ぜひとも続編を書いてほしい。

No.1141 8点 好きです、死んでください- 中村あき 2024/02/15 21:31
 いいですねぇ。好きですよ。
 恋愛リアリティーショーという舞台設定を最大限活かしています。「三年×組にて」と題された幕間の存在も大きい。様々に想定しながら読んだものの、完全にしてやられました。新鮮味のあるクローズドサークルものです。
 リーダビリティも高く、ほどよい「軽み」も好印象。映像コンテンツやSNSに対するメッセージ性も含めて、一読の価値はあると思います。

キーワードから探す
まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1160件
採点の多い作家(TOP10)
東野圭吾(56)
有栖川有栖(43)
東川篤哉(41)
森博嗣(37)
道尾秀介(26)
伊坂幸太郎(26)
島田荘司(23)
米澤穂信(22)
歌野晶午(21)
西村京太郎(19)