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ミステリー三昧さん
平均点: 6.21点 書評数: 112件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.7 6点 ユダの窓- カーター・ディクスン 2010/05/15 18:03
<創元推理文庫>H・M卿シリーズ7作目です。
目から鱗の裏技的な密室トリックが有名。「隠し絵」のように最初はなかなか見えてこない。でも、種を明かせば実に単純。見える人には見える。密室のようで、密室でない。そして、かなり実用的なお手軽トリック。その分、反則気味で素直に称賛できない。こんなのは一度だけにしてほしい。まぁ、でも「ユダの窓」かぁ。。。うん、なるほど、巧いタイトルだ。
ディクスン・カーによる法廷ミステリとしても有名。どう考えても有罪としか思えない状況から「無罪」を勝ち取るまでを描いた「逆転裁判」的ストーリーが読み所。H・M郷の推理によって、徐々に事件の裏舞台が見え始め、本当の真相が浮き彫りになる構成は素晴らしい。ただ、「無罪」を勝ち取ったまでは良いが、そのあとのフーダニットが非常に陳腐。やっぱり素直に称賛できない。どうしても名作に対して、ハードルを上げ過ぎる傾向があるらしい。

No.6 6点 九人と死で十人だ- カーター・ディクスン 2010/05/15 12:27
<世界探偵小説全集26>H・M卿シリーズ11作目です。
これは正直あまりカーっぽくなかったかな。不可能興味なし、怪奇趣味なし、ドタバタ喜劇なしと捉えどころが見つかりません。船上のクローズドサークルというテーマも多分「盲目の理髪師」の方がメジャーだろうし。私的には、舞台背景もイマイチしっくりこない。どうやら戦時中のお話みたいだが、スリリングだったとは言えず中途半端な感じ。やはり注目すべきは「姿なき殺人者」による連続殺人。殺人者が残した血染めの指紋によって不可解な謎が提供されるというあたりはカーらしい。ディクスン・カーといったら怪奇趣味満点の不可能犯罪系ですが、全部というわけではありません。非常にチグハグとした手掛かりをもとにロジック中心で真相を解き明かすというフーダニット系も意外と多い。本作はその類に該当するでしょう。
最後に、少しだけ真相に触れて感想を。私的には残念なことに既出感の高い真相でした。そもそもディクスン・カーを読もうと思ったキッカケが江戸川乱歩(or横溝正史)だったので、読み終えた直後はお二人の作品が頭によぎりました。指紋に関する盲点を突いたトリックは非常に似通った短編を一つ読んだことがあったので、ホント丸分かり状態。もしかしたらこの作品からトリックを借用したのかな。

No.5 8点 読者よ欺かるるなかれ- カーター・ディクスン 2010/05/15 12:17
<ハヤカワ文庫>H・M卿シリーズ9作目 バカミス覚悟の意欲作
そんなもん、素人に分かるか!と叫びたいほど不可能興味満点のこの作品。原因不明な死を念力のせいにしてなるものかと、奮起して読むが全く糸口が見つからず。信じたくないけど、特別な力を信じるほかない。そんな怪奇な空気感が物語全体を纏っていました。にも拘らず、H・M卿は相変らず自信満々だ。遅れて登場したくせに、何かを知っている風なしゃべりで、たちまち警察たちを手玉に取ってしまいます。頼りになる紳士ですね。彼には解決方法が46通りがあるらしい。それは、はったり?いや、実際にありそうで怖いな。
非常にミスディレクションの巧い作品でした。伏線もかなり利いています。上手く拾えるようにもなっているけど、正直アンフェアな気もします。一つだけ忠告するならこの作品、ガリレオ先生こと湯川学みたいな人種でないと知り得ない知識が事前に必要になる。そこがマイナスポイントになる恐れあり。それでも怖いもの見たさで読んでみたい方はおススメ。あまり有名ではないかもしれませんが、不可能興味・怪奇趣味を存分堪能できる作品となっているのでカー作品を楽しむうえで外せない一冊でしょう。

No.4 6点 孔雀の羽根- カーター・ディクスン 2009/12/25 13:18
<創元推理文庫>H・M卿シリーズの6作目(長編)です。
この作品は<最終章で32個の手掛かりを指摘して、不可能犯罪の真相を解明する>とあるようにロジック重視型の本格ミステリになっています。
普段見受けられる(アンフェアぎりぎりの大技やプロットの妙などの)派手さは一切なく、良い意味ではフェアを徹した堅実なミステリとなっているのですが、私的には逆に小ぢんまりとし過ぎて、味気ない普通なミステリというのが第一印象です。
「衆人環視による準密室」状況下での殺人と「犯人消失」という魅力的な謎が提供されているにも拘らず、焦点は別の方向へ・・・
事件に発展性がなく、ひたすら登場人物の供述を聞くだけで300ページ突破・・・
これは萎えます。正直、どうでもよくなってしまった。しかも「魅力たっぷりのあらすじ」に反して、最終章の大演説は決してクオリティが高いものではないので評価に困る。
フェアを貫くなら、拳銃の仕組みをもう少し詳しく描くべきです。誤発砲によって〇〇することの可能性を察するのは難しいと思います。結局、肝心な部分は伏せている点を考えると微妙。まぁ、その部分を明かしてしまったらトリックが簡単に分かってしまうので仕様がないか。。。

No.3 9点 赤後家の殺人- カーター・ディクスン 2009/11/26 20:20
※ネタばれあり<創元推理文庫>H・M郷シリーズの3作目(長編)です。
シリーズ初期の代表作『プレーグコートの殺人』『白い僧院の殺人』を読んできましたが『赤後家の殺人』が一番好きです。読めば読むほどに増していく不可能状況の数々は本格ファンを唸らせること間違いなしです。「部屋が人を殺す」という伝説が醸し出す怪奇な雰囲気も好きです。
第一の殺人は密室状況かつ全員に鉄壁のアリバイがある時点で、毒を利用した〇〇殺人であることが簡単に予想付きそうです。なのでメインは密室トリックではなく「毒殺の方法」になりますが、私的には盲点を突かれた真相だったので高評価です。伏線もフェアに張られ(翻訳文にもよりますが・・・)説得力も高めです。この抜け道を察することさえできれば、犯人も分かるという点も素晴らしい。もちろん意外性に徹したフーダニットだけあって納得し難い部分もありますが「この人」でしかありえないという「状況作り」が秀逸です。
私的には「怪奇性」+「不可能犯罪」+「謎の合理的解決(フーダニットあり、ハウダニットあり)」の融合を見事に成功させた初期の傑作と呼べそうです。

No.2 8点 白い僧院の殺人- カーター・ディクスン 2009/11/23 00:18
※ネタばれあり<創元推理文庫>H・M卿シリーズの2作目(長編)です。
テーマは「足跡のない殺人」ですね。どうやって犯人は「雪密室」状況下で別館から脱出したのかが最大の謎になります。その謎は18章のラスト一行によって見事に氷解されるわけですが、そこから展開される事件の全貌は予想以上に複雑でした。複雑故に納得できない部分もありますが「〇〇」が創り出した奇跡的な密室状況という点が秀逸です。その全貌に凄みを感じさえすれば、高評価でも良いのでは?
余談ですが、私的には同じく雪密室をテーマとした有栖川有栖の『スウェーデン館の謎』の方が好きです。まぁ雪密室のオリジナル(?)が読めたので満足です。故に採点はかなり甘めです。












(ここからネタばれ感想)
「殺害現場が別だった」という真相には驚きでした。マーシャが別館から本館へ移動したという事実を「暖炉の燃えカス」や長時間ジョンに待たされた彼女の「心理状況」などを伏線として説得力を与えていた点もGOOD。
「マーシャ殺害」・「死体移動」と2人の犯人がいたことも驚きです。ですが突っ込み所が満載です。まず「マーシャ殺害犯」ですが、言い当てることが難し過ぎます。彼の言動にもヒントがあったようですが、存在感なさ過ぎ故に察することが難しい。車の相違点も絶対一読目では気づけない。そこから派生するH・M郷の実験の狙いも見抜くことは無理。読者の方を向いているようで向いていない微妙な伏線に正直何一つカタルシスを感じていません。次に「死体移動」の犯人ですが、彼の心理状況が理解し難い。彼は「奇跡的な密室状況」を創り出すために筆者によってご都合主義に動かされたといっても過言ではない。
一番の驚きは2人の犯人が全くお互いを関与せず自らの意思によって行動していた点です。なので、共犯者と呼べるものは存在しない。しかし、二つの歯車は偶然にも絶妙な噛み合いをみせながら、(マーシャ殺害犯にとっての)不可能状況を形成していく。その全貌を「ご都合主義」の一言で片付けてしまっては面白みがない。この作品では「ご都合主義」は禁句です。

No.1 6点 プレーグ・コートの殺人- カーター・ディクスン 2009/11/11 13:53
※ネタばれあり<ハヤカワ文庫>H・M卿シリーズの1作目(長編)です。
ハウダニットは「傑作」ですね。二重の密室に関してですが、石室の密室トリックは完全にミスリーディングしてました。以前「江戸川乱歩」の作品でトリックに関する「ネタばれ」被害にあっていた。・・・にも拘わらず気付けなかった(笑)。この作品で巡り合うことになるとは微塵も感じていなかった。とにかく短剣ですね。この使い方が巧い。ですが「ネタばれ」の罪は大きい。トリックに「驚けない」のが残念です。(もうひとつの足跡トリックは肩透かしなので触れません。)






(ここからネタばれ感想)
フーダニットが理解し難い。私は「変装」トリックを根本から好きになれない。女性の男装はバレるだろう。「変装していたこと」を読者に察する余地を与えていた点は良いですが・・・「変装」トリックはできるだけ使わないでほしい。
また、共犯者がいた点も気に食わない。それを察する伏線もなかった。
意外性はあったが犯人をロジックで追及することが不可能な点で評価を下げた。

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平均点: 6.21点   採点数: 112件
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