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パメルさん
平均点: 6.15点 書評数: 570件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.11 6点 ふりむけば霧- 笹沢左保 2021/08/11 09:08
時効成立まで一年半。十八歳のとき殺人を犯し以来、逃亡生活を余儀なくされていた千早芙美子は十三年半ぶりに上京を決意した。しかし、その機中で最も会いたくなかった人間、自分が殺した女性の夫・八ツ橋待彦に出会ってしまう。だが以外にも待彦は、芙美子に逃亡の援助を申し出たのだった。
読み進めていくうちに、官能小説?と錯覚するほどのエロチックな描写が多く出てくる。(作者の後期の作品の特徴らしいが)時効まであと数日とサスペンスが高まったところでのカタストロフと意外な真相。このどんでん返しには驚かされた。他の笹沢作品にも似たパターンは無いと思うので、彼の作品を読み慣れていても、あの真相を予想することは難しいのでなないか。
ただ、序盤に明記されている「地の文章の虚偽」が、あの真相をアンフェアと思う人もいるかもしれません。その点に関する説明は、しっかりと書かれているのですが。

No.10 5点 セブン殺人事件- 笹沢左保 2021/03/27 09:15
警視庁捜査一課のスマートな刑事・佐々木と所轄署の無骨な刑事・宮本が捜査方針を巡って対立、時には協力して事件を解決してゆくという趣向の連作集。
「日本刀殺人事件」一見当たり前に見えた人間関係の些細な矛盾を突く宮本の推理が見事、伏線が効いている。
「日曜日殺人事件」主夫業に専念する夫と芸能記者の妻。夫が自宅で刺殺される。アリバイトリックだが凡作。
「美容師殺人事件」プロ野球選手と恋人の美容師をめぐる殺人事件。トリックはある設定でバレバレだが、異様な動機に驚かされる。そんなに上手くいくとは思えないが。
「結婚式殺人事件」ホテルで結婚式に出席していた刑事が逃亡中の凶悪犯に殺される。ホテルの密室状況とその真相の解明がユニークだが意外性を狙いすぎでは。
「山百合殺人事件」殺人現場に残された山百合をめぐる謎。凡作。
「用心棒殺人事件」タレント夫婦の娘が強盗を撃退して時の人に。だが、強盗の相棒が復讐のため娘を狙っているらしい。奇抜な殺人トリックと捻りの効いた動機が上手い。
「放火魔殺人事件」連続放火事件が発生するが、途中から女性の予告電話が入るように。動機の意外性に驚かされる。
刑事の名字が佐々木と宮本ということで、歴史上の人物、佐々木小次郎と宮本武蔵に例えられているが、そのデコボコぶりの扱いが中途半端で十分に生かされていないのが残念。

No.9 7点 遥かなりわが愛を- 笹沢左保 2020/07/01 10:06
冒頭からとても奇妙。四国在住の女性から警察署に電話が入り、〇〇の旅館に高野という男がいる、その男から脅迫まがいの電話が掛かってくるので、警察の方から注意してほしいという用件だった。
電話は大宮、中之条、直江津、水沢、一関、仙台、福島、米沢と連続している。しかし犯罪らしきことは起きない。高野とは何者か、女性が警察に連絡する意味は何なのか。謎は深まり惹きつけられる。
犯人が挑戦状を叩きつけ、鉄壁のアリバイを持ち(証人は警部)、殺人のモチーフに歴史ミステリの趣向があり(高野長英登場)、動機に究極の愛の哀しさがある。
ロマン溢れる独特の叙情性と歴史ミステリが加味された本格ミステリ。高野長英に詳しい方は、さらに楽しめる作品。タイトルは秀逸、読後感も爽やか。

No.8 6点 空白の起点- 笹沢左保 2020/02/10 01:13
女性客が走る列車内で、崖から男性が転落するのを目撃する。その後、転落した男性は、目撃者の父親と判明。被害者の複雑な人間関係、高額な保険金、有力な容疑者の死など惹きつけられる要素は多い。また、舞台として設定されている真鶴や小田原の地方都市の描写や登場人物像の描写も優れていて印象深い。
アリバイトリックには二つの偽装工作があるが、ひとつに関しては少し無理があると感じてしまったが、布石は十二分に敷かれており現実味がないとは言えないので一応納得。もう一つは良く出来ていて、当時の世相と相まって説得力がある。フーダニットとしては楽しめないアリバイ崩しがメインの作品だが、ラストには意外な真相があり驚かされるし、哀愁に満ちた終わり方も好み。本格とロマンを融合した作品といえる。

No.7 5点 火の虚像- 笹沢左保 2018/04/25 01:14
コンパクトにまとめられた長編ながら、何気ない中に伏線を張り緻密に考えられた構成は好印象。
ただ、登場人物は少ない事もありフーダニットの楽しさは味わえないし、ハウダニットにしても・・・。自殺に見せかけた2つの殺人はどのように行われたのかという謎が、被害者の心理がもたらす影響と犯人の腹づもりが噛み合いトリックが成立するのだが、この真相はかなり実現性に乏しく好みではない。最後に明かされるもう一つの真実は、ひねりが効いていて良かったと思う分残念。

No.6 6点 真夜中の詩人- 笹沢左保 2017/11/13 01:08
幼児誘拐事件が発生する。普通ならここで、犯人と警察との身代金の受け渡しなどでの駆け引きで、楽しませる展開なのだろうが、この作品は毛色が違う。
犯人は、何も要求しないどころか、さらに誘拐事件が発生するという展開で惹きつけられる。
ストーリーは進行するとともに、過去の人間関係が浮かび上がり、少しづつ謎が明らかになっていくが、肝心の誘拐の目的はなかなか見えてこない。
この作品は、誘拐された母親が探偵役となっているが、些細な手掛かりから真相に迫っていく姿は魅力的。
意外性があるといえばあるのだが、結末はあっさりしていて衝撃度は低い。

No.5 7点 求婚の密室- 笹沢左保 2017/04/08 01:02
使い古されたトリックの焼き直しや安易な機械トリックに飽き飽きしていた作者が初めて密室トリックに挑戦した意欲作
策謀と駆け引きが張り巡らされて陰湿で悲劇的な人間模様が描かれている
ダイイングメッセージに今一つ納得出来ないがフーダニットとして意外性もあるしある人物が事件に関与していたという真相はこれぞ盲点といった感じで驚かされた
ここまで上手くいくかなという疑問もあるが密室トリックも独創的で良いアイデアだと思う

No.4 6点 招かれざる客- 笹沢左保 2017/01/09 16:10
作者のデビュー作
密室での凶器消失トリック・誤認トリック・アリバイ崩し・不可解な暗号そして動機は?と本格推理小説の醍醐味が味わえる作品
殺人事件の有力容疑者が事故死した事により捜査を打ち切りにする雰囲気が漂っていく
そんな中釈然としない警部補が地道な捜査と推理で少しずつ真相を明らかにしていくところが読みどころ
ただあの暗号が読者で解る人はまずいないでしょう

No.3 7点 人喰い- 笹沢左保 2016/11/23 01:01
本格推理小説の技巧と哀愁のロマンに満ちたストーリーが融合している
トリックは先入観と錯覚を巧みに使われていて読者を欺くための仕掛けが惜しげもなく使われている
姉の名誉のために真相を追及していく妹がある矛盾点に気が付く
この妹がいい味出していて魅力的
数々の小道具・細かいところに仕込まれた伏線そして犯人の意外性と作者の妙技が堪能できる作品

No.2 6点 暗い傾斜- 笹沢左保 2016/10/10 22:40
男女の人間関係が愛憎と欲望で複雑に入り乱れている
独特の情緒があり雰囲気は楽しめる
ある事件の容疑者になることにより実際に犯した事件のアリバイを成立させるという
トリックはなかなか面白いと思った反面心理的な誘導を必要とするため実現可能かと
いうと少々疑問が残る

No.1 9点 霧に溶ける- 笹沢左保 2016/09/05 11:16
量産型作家として敬遠されがちな作者だがこれは傑作
ミスコンを巡って続発する怪事件
さまざまなトリックが詰め込まれ周到に張られた伏線から導かれる真相
絡みに絡み合った人間関係の構図が明らかになっていく
フーダニット・ハウダニット共に十分に楽しめる贅沢な作品
最後のオチもいい味出している

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パメルさん
ひとこと
7点以上をつけた作品は、ほとんど差はありません。再読すればガラリと順位が変わるかもしれません。
好きな作家
岡嶋二人 東野圭吾 
採点傾向
平均点: 6.15点   採点数: 570件
採点の多い作家(TOP10)
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