皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ミステリーオタクさん |
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平均点: 6.97点 | 書評数: 155件 |
No.3 | 6点 | 少女を殺す100の方法- 白井智之 | 2024/05/11 14:39 |
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作者の第1短編集・・・かな?
《少女教室》 あれだけの殺戮をやってのけた動機とグイグイ練り上げるロジックが素晴らしい。ただあんな単純なトリックが通用するのかと思いきや・・・ ありえない経歴や、ありえない松葉杖使用・・・ そんな末節はともかくトータルとしてよくできていると思う。 《少女ミキサー》 冷酷極まりない超ソリッドなクローズド・デスゲーム。正直好みのシチュエーション。 この作者らしく汚物や血塗れの臓物まみれの物語だが、展開は思った程コンクな物ではなかった。(人数が一人多いのでは?、それがキーポイントの一つか?、とも思ったが関係なかったようだ) 《「少女」殺人事件》 ふざけた作中作ミステリ。ノックスの十戒への揶揄か? 《少女ビデオ 公開版》 再び汚物、吐瀉物、大腸、残虐創傷まみれの白井ワールド炸裂の話だが、主人公が少女達をどう処理していたのか、なぜ猿を食わせなくてはならないのか、なぜ子供を産ませてはいけないのか、などよく分からないことも多い。 ただ、珍しくわずかばかりの感傷がないこともなかった。 《少女が町に降ってくる》 これは白井作品にしてはエログロが抑えられ、民話テイストを塗した荒唐無稽な特殊設定のミステリ。トリックや推理や真相はゴチャゴチャしているが面白いネタもいくつかあった。 以上本編5編。ここまでで少女が100人ぐらい死んだだろうか。 以下、文庫特別収録掌編 〈ヴィレッジヴァンガードで少女を殺す方法〉 行ったことがないのでよくわからない。 〈ときわ書房で少女を殺す方法〉 まぁ、短いからいいだろう。 〈下狢書店で少女を殺す方法〉 最終作だから少しだけ期待したが正直面白くない。 オマケの3編は殆ど「ルーフォック・オルメスの冒険」だな。 この作者は「鬼畜系特殊設定パズラー」などと称されることもあるようだが、驚くほど細密なロジックを展開してみせることもあり、個人的には「エログロを頻用する摩耶雄嵩」という印象も抱いた。 |
No.2 | 6点 | お前の彼女は二階で茹で死に- 白井智之 | 2024/04/17 21:22 |
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鬼畜系とかエログロ炸裂とか形容される作風でマニアックなファンも多いという作者の短編集。怖いもの見たさで手に取ってみる。
《ミミズ人間はタンクで共食い》 始めの5ページぐらい読んだところでやめようかとも思った(以前は合わないと感じたら早々に放り出すことも度々あった)が、数年前から一度読み始めた本は意地でも完読するという方針を自分に課しているので、自信喪失に陥らないために、また帯の乾くるみ氏の言葉も「全くのウソではないだろう」と信じて何とかしがみつき続ける。しかし尋常ではないキモさ(エログロなどという芸術的用語は相応しくない)の上のややこしくてムチャクチャな展開にはホトホト悪酔いさせられる。 《アブラ人間は樹海で生け捕り》 前作よりは、ムリヤリ鏤められたピースを強引に嵌めていくというパズラーとして、まだ読める代物にはなっているが桁外れのキモさは相変わらず。これが最後まで続くかと思うと・・・苦行以外の何物でもない。 《トカゲ人間は旅館で首無し》 幸い前2作に比べるとキモ度はやや控え目にはなっているが、やはり爛れた皮膚を剥がしたり、膿でくっつけたりなどの想像しにくい(したくもない)作業描写が多い上に、やはり推理展開もややこしい。 しかし終盤の残虐極まる壊滅は結構笑えてしまった。なるほど消化・排泄系や膿汁・粘液系はダメでもコッチ系は割りと好きだったな、と忘れていた自分のキュートな一面を久々に思い出させられた。 また前2作とは異なり、好みではない多重解決ではないのもよかった。皮膚科医の名前がゲンタというのも受けた。 《水腫れ猿は皆殺し》 更にキモ度は抑えられてホッとするが、ムチャクチャ度は相変わらず。ただ前3話のファクターを取り入れたり、またストーリー的にも一応本短編集のマトメのつもりのようだ。 《後始末》 あってもいいけどなくてもよかったかな。 人の嗜好は様々だからこういう風味の小説を好む人がいることも理解できるし、本書の各作品がキモ塗れながら特殊設定においてそれなりに緻密なロジックを張っていることも評価できる。が、生理的に合うか合わないかはどうしようもない。恐らく自分がこの作者の他の作品を手にすることは当分ないだろう。 |
No.1 | 5点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件- 白井智之 | 2023/08/02 21:11 |
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このサイトでは非常に評価が高いが、自分にはあまり合わなかったとしか言いようがない。
不可能と思われる殺人を演出するトリックの数々やそれらを突き破るロジックのしつこいまでのお披露目直しなどが高評価の理由なのだろうが、トリックはいずれもチマチマせせこましい上、成功率が高くないと思われるものばかりだし、現実には存在しない疾患を作り出して利用するのも如何なものかと思うし、それらに目を瞑ってもこの程度のロジック、多重解決なら有栖川や法月や綾辻の作品で何度も味わったレベルにしか感じられなかったし、最後の動機の解明もただの変な価値観としか思えない。 このサイトのおかげで読んでみた「方舟」の衝撃があまりにも大きかったため、当サイトでの現在、国内作品ランキング第1位の本作に期待し過ぎた部分はあるかとは思うが、本作の世評の高さは自分には理解できなかった。 |