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まさむねさん
平均点: 5.86点 書評数: 1154件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.19 6点 中野のお父さんは謎を解くか- 北村薫 2023/03/13 23:29
 シリーズ第2弾。文学ミステリとでもいうべき短編が中心ですが、その中でも「水源地はどこか」がピカイチ。
 松本清張の短編集「隠花の飾り」に収録されている「再春」が発端。この作品は自分も既読で記憶にも残っているのですが、その根底に作者自身の過去の盗用疑惑があったとは知りませんでした。時を経て、その疑惑を見事に物語に仕立て上げた清張の力にも感嘆。さらに、それこそ全体の「水源地」を探ろうとする推理(調査?)の結果が、これまたお見事。
 この短編だけで評価すれば8点。でも、収録短編ごとに個人的評価はマチマチなので、総合的にこの採点で。

No.18 4点 太宰治の辞書- 北村薫 2018/05/06 21:55
 「円紫さんと私」シリーズの最新作。前作の「朝霧」から17年を経た「私」は、引き続き「みさき書房」に勤め続けており、「連れ合い」との間に中学生の息子がいる境遇。オンタイムで接していた方々にとっては、これだけで、郷愁?を感じるのではないでしょうか。
 しかし、ここは、この作品単体での冷静な評価を。正直、「私」の姿を借りた、作者の文学論評(とまでは言わなくても文学的エッセー)の場と感じずにはいられません。確かに、個人的には、知的好奇心をくすぐられたし、太宰の「女生徒」も読み返したりしたのですが、自分勝手な一言を申し上げるとすれば「自分が望むこのシリーズとは、そういう類のものではなかった」ということになります。文学的な素養なく、生れて、すみません。

No.17 6点 朝霧- 北村薫 2018/01/11 22:01
 シリーズ5作品目で「私」もとうとう社会人に。大学時代とは違ったメンバー、環境における「私」の語りがなかなかに新鮮です。自分の社会人初心者時代を思い起こしましたねぇ。
 とはいえ、全体の雰囲気は変わらず、読み心地の良さ、余韻の素晴らしさもそのまま。前々作、前作とは異なり、今回は短編形式に戻っています。ちなみに、このシリーズは短編の方がよりフィットするような気がしますね。
 内容としては、リドル・ストーリーを扱った「走り来るもの」がベスト。白い風さんがおっしゃるとおり、ラスト2センテンスを考えるという趣向がまず面白く、実際の結末にも唸らせられました。
 そのうち、続編も読むことになりそうです。

No.16 5点 六の宮の姫君- 北村薫 2017/12/23 12:44
 「円紫さんと私」シリーズの4作目ですね。テーマは、そのものズバリ、芥川龍之介の短編小説「六の宮の姫君」です。
 うーん、これは採点が難しいなぁ…というのが率直な感想ですね。この点については、このサイトの採点分布が如実に示していますね。
 歴史ミステリという捉え方も無くはないのでしょうが、実際は主人公のコトバを借りた作者の文学論評という側面が強いような気がしますね。「空飛ぶ馬」から連なるシリーズということで手にした者としては、少なからぬ違和感というか、肩透かし感もございます。
 一方で、ミステリ以外の側面では、芥川と菊池寛との関係性など、興味深い点も随所にございましたし、作者らしい綺麗な文章に身を委ねる心地よさも、確かにございました。
 うーん、やっぱり採点しにくいなぁ。何処に着目するかで大きく変わるのですよねぇ。えい、真ん中をとってこの点数で。

No.15 5点 野球の国のアリス- 北村薫 2017/12/11 21:48
 ミステリーランド作品。
 アリスはアリスでも有栖川有栖先生とは何の関係もありません。(関係あるとは誰一人思ってないか。)ちなみに、内容としては完全にファンタジーと呼ぶべきであって、有栖川有栖先生の作風とも一致しません。(しつこい?)
 で、野球好きの少年少女にとってはそれなりに楽しめる展開かもしれないのですが、オトナにはちょっとキビシイ面があるかも。でも、野球好きであって、かつ、少年少女のココロを失わない(単に精神年齢の成長がない)ワタクシとしては、結構ワクワクして読んじゃってたりして。そんなワクワク感も懐かしかったりして。
 ということでこの採点としますが、誰にでも楽しめるとは言い難いので、その辺りはお含みおきくださいね。

No.14 5点 元気でいてよ、R2-D2。- 北村薫 2017/09/23 21:53
 角川文庫版で読了。集英社文庫版から、書き下ろし短編1編が加わっているそうです。
 筆者自身が「まえがき」で述べているとおり、「陰のある」短編が揃っています。「腹中の恐怖」の直接的な怖さも良いのですが、「マスカット・グリーン」の、何気ない“気付き”の怖さも嫌いじゃない。「さりさりさり」の、うっかりすると見落としそうな描き方も良かったかな。
 決して派手な仕掛けはないのだけれども、こういう短編集も結構好きなんですよねぇ。

No.13 7点 秋の花- 北村薫 2017/06/18 22:04
 シリーズ三作目で、初の長編作品であります。ミステリという側面よりもむしろ、物語全体の「深み」に脱帽です。
 特に、円紫師匠の最終盤のセリフ「許すことは出来そうにありません。ただ~」、そして、津田さんの母親が円紫師匠に語った最後のセリフが印象深いですね。

No.12 5点 遠い唇- 北村薫 2017/03/02 22:38
 7篇で構成される、ノンシリーズの短編集。
 パンチ力という点では消極的な評価となりますが、作者もソコは狙っていないでしょうし、全体としてはいかにもこの作者らしい、しみじみとした短編集に仕上がっていると思います。
 一方、完全に私個人の嗜好の問題なのですが、ダイイングメッセージや暗号モノにはあまり興味がありません。このタイプの短編も複数ありまして、これらの個々の短編自体の雰囲気は決して嫌いではなかったのですが、採点としてはこの辺りといたします。

No.11 4点 紙魚家崩壊 九つの謎- 北村薫 2016/08/27 12:15
 9編の短編&掌編で構成。
 最終話「新釈おとぎばなし」は楽しめたけれど、他の作品の中には、ちょっとピンとこないものもあったかな。

No.10 5点 中野のお父さん- 北村薫 2015/12/08 22:48
 出版社(文芸部)に勤務する体育会系女性編集者が出会った日常の謎を,定年間近の教師である父(中野在住)に相談してみると見事解決!…という、安楽椅子モノの連作短編集。探偵役が教師ってあたりは、作者自身をモチーフにしているのかな。8つの短編とも、分量は少なめなので、あっという間に読了できます。
 非常に読みやすいタッチで読み心地が良いです。出版社の楽屋ネタ?や、文芸・落語に関する薀蓄も楽しく、女性編集者にも好感が持てます。ただし、ミステリとしても軽めのタッチなので、多少物足りなかった印象も否定できないかな。

No.9 6点 冬のオペラ- 北村薫 2015/05/31 22:12
 短編2本と中編(表題作)1本で構成。短編は正直肩透かし気味ですが、うち1本は、完全に表題作の伏線(導入?)って感じで、まぁしょうがないのかな。
 表題作は、冬の京都の情景とマッチした、端麗な本格モノで好印象。主人公の女性を含めた、作者の筆致も心地よいです。探偵の描き方にも、作者の意思が明確に表れていて興味深かったですね。

No.8 5点 鷺と雪- 北村薫 2015/02/28 23:23
 戦争の足跡が聞こえる昭和初期の、良家の令嬢の視点で描かれる「ベッキーさんシリーズ」の完結編。
 ミステリの側面よりも、このシリーズ発案のきっかけになったという、実際にあったエピソードを活かしたラストの場面が趣深いです。確かに、あり得た話なのでしょうね。このシリーズ全体が、このラストに集約されていると言ってもいいんじゃないかな。

No.7 7点 玻璃の天- 北村薫 2015/02/15 10:50
 上流階級の令嬢「わたし」と女性運転手「別宮」によるベッキーさんシリーズ第2巻。
 舞台は昭和8~9年頃の東京。上流階級の日常は変わらなく見えるものの、国家的には不穏な空気も…という状況で、その時代背景、さらに「わたし」に語らせている国家感について、非常に興味深く読みました。
 第1話「幻の橋」がベスト。ベッキーさんが運転する車の中での「やり取り」と、その際に登場する漢書の一節は記憶に残りそうです。さらに、最終話(表題作)を読んだ上で気付く真意に敬意を表して、加点します。

No.6 6点 街の灯- 北村薫 2015/01/11 21:18
 作者の第3シリーズ(ベッキーさんシリーズ)の第一作品集。
 上流階級の女性が主人公という点で「覆面作家シリーズ」が想起されますが,若き女性「わたし」の一人称スタイルという面や全体の雰囲気は「円紫さんと私シリーズ」により近い印象を受けました。
 ミステリーとしては,派手な演出や奇抜なアイデアがある訳ではありませが,舞台となる昭和初期の風景や世相の描写が綺麗で,かつ,それをミステリーに巧く絡めています。イイ話だけでは終わらせない,毒の盛り方も作者らしいです。
 次々にページをめくらされましたので,次作も読むことになりそうです。

No.5 6点 覆面作家の夢の家- 北村薫 2013/02/16 21:20
 覆面作家シリーズ完結編。
 岡部兄の結婚という展開の早さに,冒頭から驚かされました(笑)。前作同様,会話シーンが実に楽しく,ラストも美しい。
 読み心地の良いシリーズだったし,3冊で完結してしまうのは惜しいなぁ。もうちょっと二人を見ていたかったのだけれど…。

No.4 6点 覆面作家の愛の歌- 北村薫 2013/02/16 21:09
 覆面作家シリーズ第2弾。
 登場人物の会話シーンが実に楽しい。全体的にサクサク読み進められるのも良いですね。ちなみに,表題作はこのシリーズ随一の本格色を醸し出しています。

No.3 6点 夜の蝉- 北村薫 2013/01/07 21:14
 前作に比して,「私」とその周辺人物にスポットライトを強く当てています。(その分,円紫師匠の出番は少なかったかな?)「私」の成長譚としても楽しめました。
 「ミステリ」というよりも,純粋な「小説」として読ませてくれます。特に,人間の悪意の描き方が深くて秀逸。勿論,ミステリとしての味付けがあるからこそ,際立つのでしょうが。
 私としては,前作「空飛ぶ馬」よりもこちらの方が好みかな。

No.2 4点 空飛ぶ馬- 北村薫 2012/11/10 22:01
 文章は美しかったですねぇ。しかし,冗長で盛り上がりに欠ける印象を受けてしまったのも事実。ミステリとして見ても,それほど魅かれなかったなぁ…と。まぁ,好みの問題もあるでしょうし,そういう観点で判断すべき作品ではないという意見もありましょうが…。
 ちなみに,発表当時,作者の素顔を知らされない中でこの作品を読んだならば,私などは完全に騙されたでしょうね。コレこそが最大のトリックかも。
 最後に,採点分布がなかなかに興味深いですねぇ。個人的にも採点に迷う作品でした。

No.1 6点 覆面作家は二人いる- 北村薫 2012/05/27 21:14
 現実味のない,漫画的キャラ設定ではあるのですが,私には「割り切って読めちゃう」っていうメリットの方が印象に残りましたね。
 ソフト・タッチとはいえ,ミステリ的味付けも効かせてますので,肩肘張らずに読書したい気分の方にはオススメですね。そんな気分のときに,続編も読んでみようかなぁ。

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まさむねさん
ひとこと
ミステリとしての特別な知識なく乱読していますので、私の書評はあまりアテにしないでくださいね。
好きな作家
道尾秀介・東野圭吾・東川篤哉
採点傾向
平均点: 5.86点   採点数: 1154件
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