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警察官に聞け
バークリー、セイヤーズ、ジョン・ロード他
リレー長編 出版月: 1984年11月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1984年11月

No.1 7点 kanamori 2014/07/22 00:01
”社会の害悪”といわれた新聞王カムストック卿が別荘で殺害される。浮かび上がった容疑者は、カンタベリー大主教、与党の院内総務、ロンドン警視庁の副総監という重要人物ばかり3人。事態を重視した内務大臣フィリップ卿は、高名なアマチュア探偵4人に解決を依頼することに---------。

黄金期の英国ディテクション・クラブのメンバーによるリレーミステリ。
前年に出したリレー長編「漂う提督」が13名という大人数の参加で、途中グダグダになってしまった反省を生かして?今回は、アントニイ・バークリー、ドロシイ・セイヤーズ、ミルワード・ケネディ、ジョン・ロード、グラディス・ミッチェル、ヘレン・シンプソンの6名の作家に絞っている。
なんといっても本書の面白さは、お互いの名探偵を交換して登場させる趣向につきる。バークリーがピーター・ウィムジイ卿の推理を書き、セイヤーズがロジャー・シェリンガムの探偵活動を描くという、いわばパスティーシュ競作としての楽しみ方ができる。
また、ブラッドリー夫人と舞台俳優探偵ジョン・ソマレズを合わせて、4人の名探偵それぞれが異なる犯人に到達する多重解決的な面白さもある。リレー方式のため名探偵同士の絡みがないのがちょっと残念ですが。
事前の打ち合わせも怠りなかったのか、前作と比べるとミステリ小説として格段に完成度が高く、とくにバークリーが担当したピーター卿のパートの出来栄えが秀逸で、バンターやパーカー警部に先代公妃まで出てくるサービスぶり。
なお、6人の作家のうちヘレン・シンプソンの邦訳はいまのところないが、過去にポケミスでの刊行予定があったようで、藤原編集室「幻のポケミス」の項に探偵ジョン・ソマレズの情報がある(クレメンス・デーンと合作)。