皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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ことはさん |
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平均点: 6.34点 | 書評数: 222件 |
No.162 | 6点 | さよなら僕らのスツールハウス - 岡崎琢磨 | 2022/12/25 00:25 |
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連作短編集。作品をまたいで登場する人物があるので、最初から順番に読むべき作品集。
個々の作品は、どれも意外な事実が最後に明らかになる構成だが、謎や捜査などは多くなく、ミステリ成分は薄め。 全体の構成から入ったと思うが、少し無理がある部分も多い。けれど、青春小説の味わいは心地いいので、悪くない。 |
No.161 | 6点 | 猟犬探偵- 稲見一良 | 2022/12/25 00:16 |
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「セント・メリーのリボン」の主人公が、独立した連作短編になって再登場。ほんの少しだが、「セント・メリーのリボン」の登場人物もででくる。
「セント・メリーのリボン」より、私立探偵小説風味が薄れ、ファンダジー成分が増えている。そのため、「セント・メリーのリボン」のほうが好み。 |
No.160 | 7点 | セント・メリーのリボン- 稲見一良 | 2022/12/25 00:13 |
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かなり前に稲見一良を読んだときは、そんなにピンとこなかったが、今回は滲みた。年をとってセンチメンタルになったのかもしれない。
「焚火」は、ハードボイルド・タッチの1シークエンスのもの。「花見川の要塞」、「麦畑のミッション」は、現実的舞台に少し不思議が混じりこむファンダジー。「終着駅」は軽い掌編。 最もよかったのが「セント・メリーのリボン」。語り、展開とも、しっかり作り込まれた私立探偵小説で、登場人物の心情も実によい。 本棚の片隅に置いておき、また年を重ねたら、読んでみようと思う。多分、今より滲みるんだろうな。 |
No.159 | 7点 | ホテル・ピーベリー- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:57 |
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本作はミステリ観点から一言でいえば、ハワイを舞台にしたホワットダニット。
前半は、(明確に提示されない)悩みを抱えた語り手による、ハワイ観光案内つき、登場人物紹介。内省的な語りより、なにか起こりそうな不安感を醸し出す。 中盤、事件が起きてから、ホテルの滞在人物の怪しい点がいろいろ判明し、流れるように最後まで読めた。なかなか面白い。 いくつかの怪しい話を並列させていて、展開をよませなかったが、そのせいで、それぞれの話の書き込みが浅く、「最後がああなるのなら、もっとここを書き込んでほしい」とも思った。まあ、書き込みが少ないのは、読みやすさ優先の意図かもしれない。 語り手が、共感できないキャラなのも、きっと意図的で、王道的な巻き込まれ型サスペンスにならないよう、たとえば、フランスの犯罪小説風な味わいを目指したのだろうと思う。 印象的なシーンは、中盤、主人公が「他人の事情はよくわかる」と思いながら、ある諍いを目撃するところ。こういう心理戦の描写は、近藤さん、うまいよなあ。 |
No.158 | 5点 | シェルター- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:25 |
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本作も、謎と解決が主軸の話なのに、冒頭の”謎”が弱い。シリーズ・キャラの姉の失踪と、姉に関わる不可解な少女で、”謎”としては残念ながら弱すぎる。
解決も「なあんだ」と思わせるものだし、偶然の繋がりも多々ある。過去のエピソードも、物語内の”今”と直結しない感じがする。これは、読みやすさ優先で、掘り下げが足りないせいだろう。 キャラクターが魅力的だから楽しく読めるのだが、高く評価はできないかな。 |
No.157 | 6点 | 茨姫はたたかう- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
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前作同様、するすると読める。
シリーズ・キャラクターは、前作以上に魅力的で加点が高いが、謎と解決はやはりいまひとつ。するすると読めることと、でてくる重い設定や状況が、どうもアンバランスに感じられるのは、マイナス材料だ。 本シリーズより、ビストロ・パ・マルのような明るい話のほうが売れているのは(印象だけで数値情報はありませんが)、そういうところが大きい気がする。 |
No.156 | 5点 | カナリヤは眠れない- 近藤史恵 | 2022/11/13 00:24 |
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相変わらず近藤史恵は、するすると読める。
ただ、本作は(名探偵役もいるし)謎と解決が主軸の話なのに、解決がいまひとつ。 シリーズ・キャラクターとなりそうな人物が魅力的だったので、シリーズを読みすすめたが、本作は可もなし不可もなし。 |
No.155 | 6点 | アリアドネの糸- キャロル・クレモー | 2022/10/31 00:55 |
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訳者あとがきに、作者の言葉として「わたしが書こうと思っているのは、(中略)パズル的要素でもって読者を惹きつけるタイプ(後略)」とあるが、その言葉から想像するミステリとは少し違った。1980年代のアメリカのミステリだから当然なのかもしれないが、古典的ミステリよりは、(主人公は探偵でなく大学の準教授だけれど)私立探偵小説の味わいのほうが強い。
(だからジャンルはハードボイルドにしました。本サイトのジャンル分けは、ネオ・ハードボイルドといわれる”文体がハードボイルドでない私立探偵小説(探偵が主人公でない捜査小説も含む)”の投票は迷いますね) 事件は捜査されて、徐々に全貌がみえていき、最後に解明する。そのプロセスが主体で、古典的ミステリ風の謎と解決ではない。それは、最初に発生する事件で明確だ。 主人公の勤める大学で発生した「エーゲ文明の展示品の盗難」と「女生徒の失踪」。古典的ミステリ風の謎としては地味だが、私立探偵小説としては普通の切り出しだ。 しかし、「だから、つまらない」ということはなく、ギリシャ神話を踏まえたキャラクターづくりとキャラクター配置で、事件の全貌が見えてくる手際はなかなか面白く、かなりの良作だった。ただ、ある1点、「それに気づかないとは思えない」ところがあり、そこはおおきなマイナス。 作者の言葉から想像するような古典的ミステリとしての味わいも、すこしはある。中盤の「てがかり発見」のときの、「主人公はなにを見つけた?」と読者に思わせる溜めはワクワクするし、解明に至る手がかりがxxxxxxxxxxなのは、ご愛嬌かな。 次作も読みたいと思わせる作だったが、これ以外は短編が1作の模様で残念。英語Wikiでも同じなので、翻訳されていないのでなく、原作の出版状況がそうなのだろう。 |
No.154 | 6点 | 黄泉の国へまっしぐら- サラ・コードウェル | 2022/10/24 00:30 |
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おもっていたよりユーモア成分が多かった。
若手弁護士グループが、素人探偵団として活動するという基本設定にはじまり、多くのシーンで、ほとんどシチュエーション・コメディのような状況設定になっていて、いかにもイギリスのユーモア小説と感じた。 ラストは、いくつかの情報が伏線として立ち現れ、なかなかミステリ的興趣がある。とくに、衒学のひとつと思わせるある要素が、伏線となるのは楽しい。 他作も、機会があれば読んでみたいと思っている。 |
No.153 | 7点 | ダークルーム- 近藤史恵 | 2022/10/24 00:28 |
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近藤史恵の語り口はいいなぁ。どれもするすると読めてしまう。しかも、簡潔で映像的。
例えば、写真の現像についての説明では、こう。「現像されたフィルムを通して、光を印画紙に数秒あて、そのあと印画紙を現像液に浸けるだけで、鮮明な画像が浮き上がってくる」 作業をしている人の動きもイメージできないだろうか。 それに、少し気の利いた警句も交える。例えば、こう。「なにもわからなくなったとき、人が選ぶのはいちばん簡単なやり方だ。つまり、現状を維持すること」 ただし、プロットについては、多くは中盤でラストまでの展開が読めてしまう。あくまで「語り」を楽しむ作品と感じた。 個々の作品について、簡単にふれよう。 「マリアージュ」 解説でも触れているが、ラストの締め具合がよい。登場人物も、ほぼふたりしか出さず、焦点を絞っている。 「コワス」 これは完全にホラー。足音の使い方にセンスがある。 「SWEET BOYS」 短い描写で4人の登場人物がくっきりと浮かび上がっている。そのためプロットもすっきりとはいってくる。 「過去の絵」 これは失敗作だろう。日常の謎をメインに据えてしまったせいで、解決の魅力の無さが浮き彫りになっている。登場人物はとても魅力的で、前半、彼らが会話している部分はめっぽう楽しいだけに残念。 「水仙の季節」 これも双子が魅力的。ラストがみえてしまうのがもったいない。 「窓の下には」 子供の頃の心象風景が印象的な小編。 「ダークルーム」 主人公ふたりが魅力的。このふたりから、もっといろいろ話を展開できそうに思える。 「北緯六十度の恋」 これだけは、中盤で展開がよめなかった。これも主人公ふたりが魅力的。ラストシーンも印象的。1作選ぶなら本作。 |
No.152 | 6点 | レアンダの英雄- アンドリュウ・ガーヴ | 2022/10/15 14:58 |
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読んでいて、初期の007(映画の方)を思い出した。
(本作の主人公の行動は、ほぼスパイといっていいのだが)スパイといっても、リアルなものではなくて、物語の中にしかいないような、のんびりした感じのスパイ。舞台は、現実にはなかなか行けないアフリカの島で、読者に観光気分を感じさせてくれる。相棒になるのは、(作中に細かな描写は少ないけど)美貌の女性。こう書いてみると、うん、やっぱり007ですね。 物語は、へんな寄り道なく、まっすぐ、すべるようにすすんでいく。するする読めて、一気読み。面白い。 とはいっても、展開は予想がつくし、心理描写には筆は割かれていないので、感動するほどではない。ポケミスで170ページと薄いので、2、3時間で読めて、「あぁ、面白かった」と読み終われる、佳作というところ。 ガーヴらしさとしては、ヨットの操船/行程に関してのデティールが細かいところ。多分、ここが一番書きたかったのだなと思う。あと、ラストのあっさりさは、やはりガーヴ。でも、このあと、主人公はどうするの? |
No.151 | 6点 | 異人館- レジナルド・ヒル | 2022/10/05 01:41 |
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「秘密」というと大げさだが、「誰にも言わずにいること」といえば誰しも持っているだろう。本作の登場人物の多くは「秘密」をかかえていて、もちろんそれは簡単には話さない。話すとしても、駆け引きを行う。「ここまで知られたのなら、ここまで話そう……」。
ダルジールものでもそうだが、ヒルはこの駆け引きの描き方が、実にうまい。物語の後半、駆け引きの中で、それが少しずつ明かされていくところは、パーツがひとつひとつ組み上がっていくような構築感があって面白い。 それでも、ダルジールものと比べると、キャラクターがいまひとつ弱いかな。未読のダルジールものがあるならば、そちらをすすめます。 本作は、カソリックの歴史が背景にあって、イギリスの歴史の知識があれば、より楽しめそうなのだが、私にはそこまでの知識はなかったなぁ。直近の日本では、ちょうど「黒牢城」で荒木村重と黒田官兵衛のエピソードを取り込んでいるが、それと同程度にはメジャーな話なのかな? あと、女性主人公が何度も父親の金言を思い起こすが、それがまるでダルジールの言葉のようで面白い。例えば「蹴られたら蹴り返せ、むこうが蹴ってくるのをやめるまで蹴り続けろ」(208ページ)。うん、やっぱりこれはヒルの味だな。 |
No.150 | 5点 | 虚空から現れた死- クレイトン・ロースン | 2022/09/25 14:46 |
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すごい久しぶりのロースン。
中編2作の本書ですが、2作とも序盤の謎の盛り上げは尋常じゃない。「これ、どう説明つけるの?」と思わされる。 2作目は、序盤だけでなく、終盤まで不可解な事件が続発する。 けど、解決がなぁ。「そんなこと」という感じなんだよなぁ。「謎の演出は見事だが、解決の演出は考えられていない」という感じ。謎の演出に特化しているのは、ロースンが奇術師だからか? だから、読み方としては、アトラクションを楽しむように、次々と起こる事件をおっていくのが吉でしょう。 謎の盛り上げが大きい分、解決にがっかり感を感じて、マイナス評価する人も多そう。私の評価は、謎の盛り上げとがっかり感で、プラスマイナスゼロとしておきます。 そういえば、ロースンの他の小説も、だいだいこんな感じだったなぁ。ただ「帽子から飛び出した死」だけは凄く面白かった印象が残っている。これは再読しようかな。 |
No.149 | 5点 | 鉄路のオベリスト- C・デイリー・キング | 2022/09/23 00:09 |
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「海のオベリスト」と間をおかずに読んでみた。
読んでいてまず気になったのが、捜査に関して実にゆるいこと。 死者がでる事件があるのに、鉄道の運行も止めず、新たに乗り込む捜査関係者も検死医がひとりとは、現代の感覚ではありえない。執筆当時の1930年代でも、同時期の他作品と比較するとありえないと思う。(「海のオベリスト」でも捜査に関してゆるかったが、それは「船上であるためにしょうがない」と思えた。本作では、しょうがないと思わせる状況がないので気になる) そこを「お約束」として気にしなければ、大陸横断鉄道の旅を背景に、コージー・ミステリのような空気感で読める。 ただ、ネットで書いているひとも多いが、心理学/経済学の記述が、ミステリとうまく絡まないので邪魔に感じるし、真相も無理を感じる部分がおおく、あまりたかく評価はできない。 美点は、(事件現場捜査時に「奇妙に思えることがある」とだけ話して、具体的な内容は解決編まで伏せられている)主人公の最初の気づきで、なかなか「なるほど」と思わされた。xのxxxxのいい例だと思う。クイーンのいくつかの作例が思い浮かぶ。 「手がかり索引」も、「海のオベリスト」よりもこなれてはいるが、やはりこれも惹句以上のものではないかな。 とはいえ、プールがある(!)列車とか、(事件が起きても運行する!)数日にわたる車窓の風景など、(「海のオベリスト」と同様に)極めて映像的な作品で、ミステリ外の面白さはあるので、たまにはこんな作品もいいかな。 |
No.148 | 7点 | 甘い毒- ルーパート・ペニー | 2022/09/11 01:09 |
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いくつかのネット評などをみて、解決部分以外は読みづらいのかなと構えていたが、杞憂だった。会話主体の文章で、キャラクターもきっちり書き分けられ、ストレスなく読める。
第1部では、進行形でチョコレートの盗難/廃棄事件と、関係者の人間関係、過去の事件の説明などが淀みなくすすみ、不穏な空気が感じられるなか、一旦調査は終了する。第2部で事件がおきるが、ここでも事件は証言として伝えられて、会話が主体なので、スムーズに状況理解できる。終盤、ある事実が判明して、そこからいくつが重要事実が証言され、「幕間」を挟んで、解決編に一気になだれ込む。飽きさせない構成だった。 判明する事件の構図は、ありがちかもしれないが、かなり好き。 また、解決編であげられる「ありえないこと」は、「たしかに」と思わされるもので、そこから展開される推理は(唯一とはいわないが)実に説得力がある。クイーンの初期作と比べると、推理の意外性も、推理の強度もすくないが、”読者への挑戦”があることを納得するだけの説得力はある。 全体として、確かに、キャラクターの描き込みは深くなく、主人公の個性も乏しい。ドラマ的な盛り上げも少ないので、小説にドラマを求める人とか、ミステリ的ガジェットを求める人とかには、面白みは少ないのかもしれない。 しかし、「謎とその解決」を(段取りも含めて)楽しめる人ならば、楽しめるだろう。私は、シンプルに「謎とその解決」だけになっていることに、かえって好感をもった。 クラッシックな謎解きミステリの佳作として、おすすめできる。 |
No.147 | 6点 | 海のオベリスト- C・デイリー・キング | 2022/09/04 23:16 |
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読み終わって振り返ると、「謎と解決」は、いまひとつ。提示された謎のうち、いくつかは途中で判明するし、それも「なぁんだ」というものもあるし、被害者の二人のうちの一人の扱いは「なんだかなぁ」という感じだし、途中でたたかわされる心理学による推理も「どうなの?」と思うし。
惹句として使われる「手がかり索引」は、初期クイーンの諸作の「手がかり」と比べると、圧倒的に薄味で、惹句以上のものではない。 逆に面白かった点は、銃撃戦のシーンや、「船が沈むかも?」というシーンや、飛行機が飛び立つというシーンで、舞台設定もあわせて考えると、極めて映像的な作品だといえる。 評判をきいて期待していた部分と、違う部分か楽しめた作品です。 |
No.146 | 6点 | 英国風の殺人- シリル・ヘアー | 2022/09/04 23:01 |
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解説に「戯曲が元」というような記述があって、たしかに舞台のようだった。各章、それぞれ1つの場で進行する構成は、舞台を見ている状況を思い描いて読むと、各章がイメージしやすいと思う。そのためか、全体の構成は見通ししやすく、謎やキャラクターの葛藤がすっと入っきて読みやすい。
クリスマス・ストーリーとして構想されていると思われ、雰囲気も良い。雰囲気の良さは翻訳によるものも大きいと思う。(英語がわかるわけでもないし、原書を読んだわけでもない、日本文からだけの感想だけれど)良い翻訳だと思う。 皮肉めいた状況や展開は、いかにも英国風のユーモアだなと感じる。解説で称賛されているのも、その点だと思う。 けれど、ミステリとしては、あまりみどころはないかな。真相として提示される内容も、矛盾のない仮説のひとつ以上に証拠がない。ある部分、意外ではあるが、それだけかな。 キャラクターも魅力があり、英国風のユーモアがある小説としては大いに楽しめるが、ミステリとしての楽しみとはベクトルが違う気がする。 |
No.145 | 7点 | スティグマータ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:24 |
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「サヴァイヴ」「キアズマ」と変化球がきた後、今回は「サクリファイス」「エデン」と同じ白石の語り。ああ、私は白石の語りが好きだ、と気づかせてくれた。
「サクリファイス」「エデン」も白石の語りだったからよかったんだな。抑制が効いていて、基本的に冷静で、けれどときに熱くなる。熱くなっているるときも、語り口は冷静。ああ、この語りいいなぁ。白石の語りでの続編を早く書いてほしい。 とはいえ、「サクリファイス」「エデン」とプロットとして似すぎている点は気になる。次回作は別のプロットにしてほしい。 最後に、本作を読んだとき、めずらしい経験があったので書いておきます。 本作は、本屋の店頭で文庫化したのをみつけたのだが、そのとき「早速読もう」と思って読みかけていた小説は一旦止めて、買い求めた本作を読み始めた。読んでみると、途中で重要なキャラとしてヒルダという人物がでてくるのだか、読むのを一旦止めた小説が、なんと「ヒルダよ眠れ」だった。ヒルダなんていう名前を小説で読んだのは他に記憶に無いのに、たまたまその2作をこんな風に読むなんて、「いやいや、どんな偶然だよ」と唖然とした。 |
No.144 | 6点 | キアズマ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:18 |
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「サクリファイス」シリーズ扱いだが、同じ自転車競技を題材にしている(同じ世界線の?)別キャラの話。シリーズとしていいのか?
「サクリファイス」シリーズとしては、疾走感に劣るので少し点は低い。(つまらなくはない) |
No.143 | 7点 | サヴァイヴ- 近藤史恵 | 2022/07/19 00:17 |
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「サクリファイス」での周辺キャラを主人公にしたサイドストーリー。
「サクリファイス」の世界が楽しめたなら、楽しめます。とはいっても、「サクリファイス」を読んでキャラを知っていないと、そんなに楽しめないかも、と思われるところはある。 |