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[ クライム/倒叙 ]
明日に別れの接吻を
ホレス・マッコイ 出版月: 1981年11月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1981年11月

No.1 7点 kanamori 2016/09/04 18:36
インテリの犯罪者ラルフ・コッターは、デリンジャーのような大物ギャングになる野望を抱いていた。刑務所を脱獄した彼は、逃げのびた町で脱獄仲間トコの姉で脱獄の手引きをしたホリディと暮らし始め、野望実現の第一歩として、地元警察の幹部の弱みを掴み、小さな町を牛耳る計画を進めるが--------。

米国人作家ホレス・マッコイは、長編第1作「彼らは廃馬を撃つ」など1930年代に3作の長編を出すも全く評判にならず、戦後になってフランスで再出版されたものが、”文学性”で高い評価を受け、本国アメリカでも認められるようになった作家とのことです。フランスからの逆輸入というパターンは、「イマベルへの愛」のチェスター・ハイムズとよく似ており、不条理なノワールものが大好物なフランスならではという気もします。
本書は、すでに名声を得たあとの1948年発表の長編第4作で、ハヤカワミステリ文庫の裏表紙には、”ハードボイルド抒情派”という紹介をされていますが、今でいうクライム・ノヴェルの範疇にはいる作品だと思います。
クライム・ノヴェルといっても、メインとなる競馬の売上金強奪の場面は意外とあっさりした書き方をしていて、「俺」こと主人公のラルフ・コッターの不条理で屈折した造形が一番の読みどころと言えます。
富豪から差し出される大金を拒否する一方で、薄汚れた犯罪による札束には固執したり、富豪令嬢より男好きの欲深い女ホリディを選ぶ。主人公の思考と行為は不条理で一貫性がなく、結局は選択を誤ったことが最後に破滅に繋がってしまいます。子供の時に受けたトラウマからくるある行為と併せて、この不条理感が”文学性”といわれる所以なんでしょうか。


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ホレス・マッコイ
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