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[ 時代・捕物帳/歴史ミステリ ]
半七捕物帳
岡本綺堂 出版月: 1950年01月 平均: 7.91点 書評数: 11件

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1950年01月

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1957年01月

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1977年05月

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1985年11月

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1995年05月

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1998年06月

春陽堂書店
1999年10月

No.11 6点 ボナンザ 2022/04/24 19:20
創元でも出たので読了。やはり色々な意味で半鐘の怪がミステリ的には代表作だろうが、全体的に江戸情緒が感じられて面白い。

No.10 5点 よん 2021/03/12 12:28
評価が高かったので読んでみた。このような古い作品を評価するのは難しいと改めて思いました。刊行当時に読めば、驚いたのだと思いますが当時の人の気持ちになって読むということが出来ませんでした。トリックは子供騙しぐらいにしか思えなかったのが残念です。今後はこのシリーズを読むことはないでしょう。

No.9 9点 文生 2020/09/02 17:41
江戸の風俗描写を交えながら不可解な謎を提示し、その謎を半七が小気味よく解いていくスタイルに痺れます。とにかくテンポがよく、謎解きのレベルもかなりのものです。個人的にはシャーロックホームズよりも楽しめました。このような謎解きミステリーの傑作が江戸川乱歩がデビューする以前から存在していたことに驚かされます。

No.8 9点 麝香福郎 2020/02/08 19:33
語り口が岡本綺堂の魅力。時代は幕末の頃で、舞台は江戸。当時の風俗習慣も町の様子もさりげなく書き込まれている。そこにまぎれもなく存在している何とも懐かしい空気は、岡本綺堂がつくり出したもの。江戸の風物詩があるから、江戸情緒があるから懐かしい、というものではない。
この捕物帳には怪談仕立てのものがいくつも出てくる。武士はともかく、人々が怪異なものを信じていた時代だから、幽霊やお化けが世間を騒がし、犯罪にも幽霊やお化けが絡む、といった事件は珍しくもなかったのだ。幽霊やお化けには必ず種も仕掛けもあり、そこには怪異と見せかけた犯罪があることを見抜いて、そのからくりを明らかにしてみせる。
考えてみれば当たり前のことで、この捕物帳は怪異小説ではなくて、シャーロック・ホームズものにひけをとらない立派な探偵小説なのだ。改めて岡本綺堂の力量に脱帽だ。

No.7 5点 蟷螂の斧 2018/12/14 18:55
読み物としては楽しめました。ただミステリーとしてはどうなんだろうという疑問。「モルグ街の殺人」や「シャーロックホームズもの」と同様に、ミステリーとしての評価よりも歴史的意義に重点を置くしかないような(苦笑)。いわゆる探偵風味の「捕物帳」の嚆矢として。なお、解説の都筑道夫氏による「推理小説」説には抵抗を感じてしまいました。何故なら、「推理」というものがほとんどなく、閃きやハッタリ、さらに岡っ引きの立場を利用した強引さで事件を解決しているわけですから・・・。ミステリーという観点から辛目の採点となりました。悪しからず。

No.6 10点 弾十六 2018/11/23 05:53
光文社文庫で全話読了。
1917-1937発表。
他所ではタダで本文が手に入りますが、おすすめは講談社 ≪大衆文学館≫文庫。雑誌掲載時のイラスト付きです!人によっては邪魔に感じるでしょうが、この企画は是非ほかでも実施して欲しいですね。乱歩さんも当時のイラスト付きが見たいと思いますし、パジェット付きのホームズやテニエル付きのアリスは当たり前ですよね。
綺堂先生には本物の江戸時代を感じます。特に、江戸の夜の暗さがイイ。会話の口調も心地良いです。
トリックも雰囲気を壊さないような工夫が見どころ。でも江戸の警察制度のリアルではないとも思われます… (実は謎解き小説より江戸岡っ引き裏話のようなのが読みたいほうです)

No.5 6点 パメル 2018/11/04 01:41
まだミステリが根付いていなかった大正時代にミステリと時代小説を融合した捕物帳というジャンルの先駆けとなった作品らしい。
時代小説というと硬質な文章で読みにくいという勝手なイメージがあるが、この作品は歯切れのよい文章のためリーダビリティが高く、時代小説を苦手としている方でも入門書としてお薦め出来る。
またこの時代に書かれたとは思えないぐらい謎解き小説として完成度は高いし、江戸時代の情緒を満喫させてもらえるし、古臭さをあまり感じさせない点は驚き。
しかし、あくまでもその時代にしてはという事であり、現代ミステリを読み慣れてしまうと、やはりミステリ要素的には物足りなさを感じてしまう。歴史的価値とかを考慮せず採点する主義なのでこの点数になってしまいます。

No.4 9点 tider-tiger 2016/11/11 07:08
読みつけないジャンルですが、守備範囲が広く読書量も相当なものであろう御三方が口を揃えて褒めそやす作品でしたので気になって手に取りました。こりゃ本当に面白いわ。
コナン・ドイル、ジョルジュ・シムノン、星新一、彼らの凄さを併せ持つ作品でした。
毎日寝る前に一篇ずつ読むのが習慣となり、男の子が生まれたら半七と名付けてしまいそうなくらいはまりました。
クリスティ再読さん御指摘のように、かつての日本、日本人を愉しみながら知ることのできる超優良書籍でした。文章も柔らかで非常に美しい。
では、ミステリとしてはどうなのか。いくつか楽しみ方を。

江戸時代シークレットを知る
半七はやたらと鰻を食べます。本書十四篇のうち五篇くらいで鰻を食ってました。事件の関係者にも奢ったりして、私なんか年に一、二回しか食えねえのにクソ……現代人は以下のような推測をするでしょう。「半七は食道楽。半七は実は金持ってる。半七は見栄っ張り」
ところが、江戸っ子視点では「なにバカなことを言ってやがる」となるのです。
実はこの時代、鰻は庶民の一般的な食べ物だったりするわけです(半七の時代には高価なものになっていたかもしれませんが、そのへんはご容赦を)。
江戸っ子視点では謎などなくとも、現代人には謎となってしまうことものが作中に溢れています。故に現代日本人が一緒に推理を楽しむのは難しい。が、以前に書評した『叫びと祈り』の異文化理解によって謎が解れていくさまを楽しめた方には半七も楽しめるのではないかと。

江戸時代ロジックに酔う
『弁天娘』いつまでも子のできぬ夫婦が弁天様に願掛けをします。そうしてできた娘について以下のような文章がありました。
~弁天様から授けられた子であるから、やはり弁天様と同じようにいつまでも独り身でいなければならない。それが男を求めようとするために、弁天様の嫉妬の怒りに触れて、相手の男はことごとく亡ぼされてしまう~
整理すると、弁天様は独り身である→弁天様は自分が授けた子に男ができると嫉妬してしまう→相手の男は亡ぼされてしまう。
論理的な考え方だと思います。江戸時代の人は非科学的ではあったかもしれませんが、非論理的だったとは思いません。前提が正しいかどうかは論理性の有無とは関係ありません。
※私の祖母も「弁天さまを祀っているところに女子と一緒に行ってはならねえ」と言ってました。弁天様は嫉妬深いというのは昔の人には自明のことであったようです。

江戸時代エンディングに煙に巻かれる
『猫騒動』このラストは現代ミステリでは許されないと思われます。ところが、半七の世界に置かれるとひどく不気味な後を引く結末になります。

~I live in Edo~は長嶋茂雄氏の有名な迷言ですが、もしかすると長嶋氏は半七捕物帳の愛読者なのかもしれません。
※I live in Tokyo.を過去形にしなさいと言われて同氏はTokyoをEdoとしたらしい。

No.3 9点 斎藤警部 2016/03/15 09:30
明治のサム・ホーソーンか、江戸のシャーロック・ホームズか。
冒険と謎解きの瑞々しいA級融合は後者、心地よく複雑な物語視点の構造は前者を思わせる、戦前日本栄光の古典ミステリ作品群です。 
江戸末期の探偵譚を明治期に追想して語る、という形式のストーリーを大正~昭和初期にかけて紡ぎ出す、というそれだけでもう、過去と大過去の並走感が、思わず身を委ねたくなる分厚さを各物語に付していますね。更にそれを平成グローバルストラテジック格差社会の現代に読むとなったら、これはもう自ずと浮かび上がるメタ・メタ感覚に虹の向こうまでスイッと飛ばされちまう。。 ってなもんです。 無駄と撓みは無く、スリルと知的興味、人間味と温かさが充満する豊かな短篇時代小説世界に、いつか君も、出遭えますように。。

とりあえず私がまとめて読んだ事があるのは『講談社大衆文学館 半七捕物帳』(北原亞以子編)で、目次は下記の通り。
十五夜御用心 /金の蝋燭 /正雪の絵馬 /カチカチ山 /河豚太鼓 /菊人形の昔 /青山の仇討 /吉良の脇指 /歩兵の髪切り /二人女房
編者のセレクション力も手伝っているとは思いますが、やはり磐石の9点相当かと。

No.2 10点 クリスティ再読 2014/12/26 20:31
半七は日本ミステリの皮切りと言っていい作品なのだが、これぞ日本ミステリの最高のものとして、世界に誇っても全然不思議ではないミステリの枠さえ超えた大傑作シリーズである。

ミステリ=「シャーロックホームズに刺激を受けて書かれた作品」と乱暴に定義するのならば、明白に半七はまさにそうなのだし、幾多のフォロワーたちを抜いて優れているのは、ホームズが持っている「社会のすべての階層を描いた小説」という側面を、まじめに実現できているという点である。いや、それだけではなく、描かれている社会が「過去の社会」である、というまさにその点で、ホームズさえも凌駕するところがある。

半七は有能な職業人ではあるが、天才探偵ではない。半七が到達する真相が驚くべきものであるのは、半七の生きた世界がすでに存在しないためであり、半七にとって明白なことは半七捕物帳の読者にとってはすでに自明ではないからである。それゆえ半七捕物張は意図せざるメタ・ミステリであり同時に、幕末社会に対する最高の案内書なのである。

日本と日本人の来歴を理解するためにこれほど優れた本は存在しない。日本人必読の書だと言っても過言ではない。それこそ漱石鴎外と並べても遜色がない小説なのだから、評点は最高点である。「逝きし世の面影」あたりを併読するとさらに佳し。

No.1 9点 kanamori 2010/08/01 14:56
多数ある捕物帳の元祖がこの「半七捕物帳」で、第1作の「お文の魂」が書かれたのが、大正6年(1917年)だから、乱歩もまだ耽美的な変格ものを書いていた時期だと思います。
設定は、作者が幕末に岡っ引きをしていた半七老人から昔の手柄話を聞くという構成になっていて、ミステリ趣向はもちろん、江戸庶民のドラマ、季節の風物誌としても楽しめる。探偵小説としては、作中のトリックが、作者も”江戸のシャーロック・ホームズ”と言う通り海外古典ミステリからのイタダキが散見されますが、それを江戸時代に応用した点がすばらしい。
宮部みゆき・北村薫編集の傑作選も出ており、時代小説にアレルギーがある方も是非一読をお薦めします。


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岡本綺堂
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