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[ ハードボイルド ]
さらば長き眠り
沢崎シリーズ
原尞 出版月: 1995年01月 平均: 7.71点 書評数: 14件

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早川書房
1995年01月

早川書房
2000年12月

No.14 4点 レッドキング 2022/12/16 20:36
私立探偵一人称語り=ハードボイルド文体が、眼に心地よい。初っ端登場の浮浪者が、和製マーロオ:沢崎のレノックス・・マロイでもよいが・・役になる「男同士の交情」展開かと思いきや、「女同士」物語が真相であった。
刑事とヤクザの似た者強面描写ナカナカだが、前二作と比べ、彼らとの関係、何か軟弱化してない? ラストの劇画チック展開ともかく、暴力団から5万円寸借しちゃう場面は・・チトおもはゆく。
※三十年前と今とで大きく変わった事・・喫煙が「悪癖の美学」でさえなくなり、単なる少数者の嗜好となってしまった事。それから、当時は珍品だった「携帯」でさえ「ガラケイ」という過去の遺物になりつつある事・・

No.13 8点 2021/04/08 06:33
 冬の終りの真夜中近く、雨の中九時間以上ブルーバードを駆って、およそ四〇〇日ぶりに東京に帰ってきた探偵・沢崎。色褪せた事務所で彼を待っていたのは一人の浮浪者だった。その男の言伝ては十一年前の甲子園大会で、八百長試合の嫌疑を受けた元三鷹商業ピッチャー・魚住彰からのもの。無聊に任せて調査を進める沢崎は、同時期に彰の義姉・夕季が勤め先のマンションから飛び降り自殺している事を知り、また別件で彼に降り掛かった嫌疑を払うが、肝心の依頼者は既にその気を失くしていた。
 それから数週間後、沢崎は事務所を訪れた彰を問い詰め、おもむろに八百長事件の核心に触れる。吐き気を堪えて事務所を飛び出す彰。その直後、彼は何者かに後ろから襲われ瀕死の重傷を負う。激しい痛みを必死に堪えながら、彰は駆けつけた沢崎に改めて夕季の事件を依頼するのだった・・・
 直木賞受賞の『私が殺した少女』から五年の月日を要して仕上げられた、第三長篇にしてシリーズ一期の集大成。1995年刊行。なかなか焦点を絞らせないまま進む作品だが、読了するとボリュームのみならずそれに相応しい内容を持っていることが分かる。文章は相変わらず硬めだが、錦織警部を始め清和会の橋爪や相良との掛け合いなど、レギュラー同士の絡みはかなりこなれて来ており、スローな筋運びも成長に伴う余裕と解釈したい。
 前二作とは異なり、事件の背景が本格的に姿を現すのはストーリーも半ば過ぎからで、それもチラ見程度のまま。そこから元の展開へ帰ると見せての相次ぐ襲撃事件。負傷を推して主人公・沢崎が一気に真相に迫り、後は釣瓶打ちで事件関係者全ての実像が暴かれる。テンポは遅いが最後の詰めは非常に充実しており、当サイトでの高評価もむべなるかなという感じ。
 ただ読後感は〈飛び抜けた〉と言うより〈これ程の物にマイナス点は付け辛い〉といった面が強く、既成概念を揺さぶるような出来ではない。総じて高く纏まってはいるが、国産ミステリベストかと言われるとどうだろうか。重量感もサプライズも文句無いが、飽くまで収穫の一つとして読むべきである。

No.12 9点 E-BANKER 2016/01/09 12:56
皆さま明けましておめでとうございます。(遅くなりましたが・・・)
2016年(平成28年)最初の書評はどうしようかなと熟考した結果・・・手にしたのがなぜか本作。
私立探偵沢崎シリーズの四作目にして最長の本作。

~400日ぶりに東京に帰ってきた私立探偵沢崎を待っていたのは浮浪者の男だった。男の導きで、沢崎は元高校野球選手の魚住からの調査を請け負う。十一年前、魚住に八百長試合の誘いがあったのが発端で、彼の義姉が自殺した事件の真相を突き止めて欲しいというのだ。調査を開始した沢崎は、やがて八百長事件の背後にある驚愕の事実に突き当たる・・・。沢崎シリーズ第一期完結の渾身の大作!~

これは・・・スゴイ。
文庫版で600頁弱の大作。完成まで五年以上の歳月がかかったというのが頷ける中味。
事件の発端は十年前以上の事件なのだが、沢崎が事件に関わった途端、まるで現在進行形の事件であるかのように彼の周りに大きな“うねり”が発生する。
自殺として解決したはずの事件の裏には、複数の人間・組織の悪意や保身が隠されていた。
沢崎の孤独な調査が目眩く謎をひとつひとつ紐解いていく・・・
ひとりひとりの登場人物が実に魅力的だし、欲や保身、見栄のために犯罪に手を染めてしまうのがいかにも人間臭い。
もちろん本格ではないので、読者が謎解きを楽しむというプロットではないけれど、何重にも重ねられた事件の構造や意外性のあるラストなど、ミステリーファンにとっても十二分に満足できるストーリーだと思う。

今回は沢崎が探偵業に手を染めることになった渡辺の消息がひとつのサイドストーリーとなっている。
シリーズ当初より沢崎に付きまとう錦織刑事、そしてヤクザたち・・・彼らとの関係にも一定の結末が得られるなど、シリーズの分岐点としても重要な作品。

世評としては直木賞受賞作「私を殺した少女」の方が上なのだろうが、個人的には本作の方に魅力を感じる。
とにかく、新年から手応えのある作品に出会えたことに感謝したい。そんな気持ち。
よって、久々にこの点数。

No.11 8点 いけお 2010/09/02 04:52
ハードボイルド系作品として非常に完成度が高い。
主人公の推理力がやたらと高いので、もう少し説得力があってもいいかも。

No.10 7点 kanamori 2010/03/10 21:16
私立探偵・沢崎シリーズ長編第3作。
「さらば」「長き」「眠り」。タイトルからしてチャンドラーへのオマージュですか。ギャグかもしれませんが。
前2作と比べて文体の緊密度が下がった感じは受けますが、その分読みやすくなっています。ミステリとしても満足いく出来だと思いました。

No.9 6点 あびびび 2009/12/03 16:43
日本という国で、ハードボイルドを書くのは至難の業だと思う。遅筆と聞いたが、それもよく分かる。

アメリカなどでは見たまま、会話のまま書けばある程度ハードボイルドになりそうだが、この国ではそんな洒落た会話はほとんどない。

そんな環境の中でこれだけ楽しませてくれるのだから凄い才能と努力だと思う。決して、上から目線でなく…。

No.8 8点 frontsan 2008/12/08 11:43
原りょうのシリーズは、全部読んでいます。ハードボイルド好きの私としては、十分に楽しめましたが、本格推理小説好きの人には、合わないかもしれません。

No.7 8点 VOLKS 2007/12/22 21:35
前作からかなり経ってからの作品ということで、ぎっしり詰まった作品に仕上がっているように感じた。重量感のある読み物。読み応えがあった。
「長き眠り」から覚めたのは作者か?w

No.6 7点 永沢 2005/05/29 23:47
長編の初めの三作を読みましたがイマイチ、沢崎の顔がイメージできない。魅力が伝わってこない。
作品内容に関しては、よかったです。

No.5 8点 小太郎 2003/04/02 00:40
相変わらずコテコテな和製ハードボイルド。最初は笑ってしまったし、鼻につく文体だったのですが、3冊目ともなるとすっかり愛着が湧き(笑)、もっと読みたくなるから不思議です。

No.4 8点 えむ 2003/03/07 20:44
読者をひきつける魅力的な作品。
『私が殺した少女』のほうが好きだが、
文句はない。苦情を言うとすれば、早く新作を出してくれということのみである。

No.3 10点 TAKA 2002/12/08 16:28
同じく最近読んだなかでは最高。

No.2 7点 SAK 2001/06/16 18:24
久しぶりに出た作品だけに期待が大きすぎたかも。
でも、原氏の作品は凄く好きです。

No.1 10点 TAKA 2001/04/30 17:47
文句なし!最高!


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原尞
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