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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
名探偵と海の悪魔
スチュアート・タートン 出版月: 2022年02月 平均: 6.00点 書評数: 3件

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文藝春秋
2022年02月

No.3 7点 ʖˋ ၊၂ ਡ 2023/10/12 13:01
十七世紀前半、インドネシアからオランダまでの航海に出た貿易船を主な舞台としたミステリ。
前半、帆船に浮かび上がる印、謎の言葉、「魔族大全」など数々の怪奇をめぐる思わせぶりな展開が続くも、後半、極秘の積み荷の消失あたりから怒涛の展開を見せていく。船の上でゴシック趣向が全開し炸裂する。魅せられました。

No.2 6点 人並由真 2022/07/05 04:21
(ネタバレなし)
 1634年。インドネシアのオランダ領バタヴィアから、アムステルダムに向けてガリオン船(当時の大型帆船)「ザーンダム号」が出航する。だが出航直前、ひとりの人物がこの船に呪いがかけられている旨の示唆を表した? その船内には、バタヴィアにて超人的な推理能力を発揮した錬金術師にして名探偵サミュエル(サミー)・ヒップスの姿があったが、しかし彼の待遇は客人でも乗員でもなく、何らかの罪状故にオランダへと護送される囚人としてだった。サミーの助手かつ友人だった軍人アレント・ヘイズ中尉は、可能な限りの便宜をサミーのために図る。そして出航した船の周辺では、死者の徘徊や幽霊船の出没、そして怪異な殺人事件までが続発する。
 
 2020年の英国作品。
 いわゆるジャンル越境ものの内容、そして二段組の活字ぎっしり400ページ以上の大冊で、国産のそこらの新本格ミステリ3~4冊読むくらいのエネルギーを消費した。それくらい全編フルスロットルな感触の小説。
 
 それでもとにもかくにも何とか2日ぐらいで読めたので、ツマラナくはなかったが、海洋小説、オカルト風ホラー部分、そして謎解きミステリの興味が互いに主張しあって、読み手の側から見れば楽しみどころが相殺されてしまっている印象もある。

 読み始める前は、この手のジャンルミックスものの長編として大好きなニーブン&パーネルの『ドリーム・パーク』とか沢村浩輔の『北半球の南十字星 (海賊島の殺人)』みたいなものを期待していたのが、そーゆー心地よさの方にはいかなかった。
(ただしあれもこれもと欲張った作者のパワフルさは認める。)

 あと、大ネタのひとつふたつ、たとえば<あー、このパターンなら、(中略)は(中略)なんだろう>とか、早々に読めてしまうのは難点。
 まあフーダニット的な意外性はなかなかだと思うけれど、そのサプライズの度合いが作品の面白さにいまいち繋がらないのは残念。

 ラストのクロージングは、この作品の大設定=17世紀の過去の世界が舞台、に似合った感じで良かった。
 その辺の呼吸は、ちゃんと作者もわかってらっしゃるんだよね、という感じ。国産の冒険小説ミステリ作家でこーゆーものを書く人がもしいたとしたら、同様のまとめ方をしそうな印象もある、ある意味では王道の変化球だとも思うけれど。

No.1 5点 nukkam 2022/05/20 13:36
(ネタバレなしです) SFミステリーの「イヴリン嬢は七回殺される」(2018年)でデビューした英国のスチュアート・タートンが2020年に発表した第2長編です(英語原題は「The Devil and the Dark Water」)。「イヴリン嬢は七回殺される」はジャンルミックス型らしいのですが(私は未読です)、本書も海洋冒険小説、本格派推理小説、歴史小説、怪奇小説がミックスされています。作者は歴史描写については細部にこだわらずフィクションであることを強調していますが、十分に時代性を感じさせていると思います(歴史知見の乏しい私が賞賛しても説得力ないですけど)。船に乗り合わせた船員、兵士、そして船客の関係がどちらかといえば対立的ですし、男尊女卑描写も容赦ないところは現代社会と大きく異なる雰囲気です。前半は物語のテンポが遅過ぎで、後半は劇的に盛り上がりますが色々詰込み過ぎで意外とサスペンスを感じませんでした。冒険小説として人が(結構大勢)死ぬのと本格派の被害者として人が死ぬのをごちゃまぜにしているためか、それなりに推理説明はしているのですが謎解きのすっきり感があまり得られません(なかなか巧妙なミスリーディングがありますけど)。善悪を超越した決着のつけ方がユニークです。


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スチュアート・タートン
2022年02月
名探偵と海の悪魔
平均:6.00 / 書評数:3
2019年08月
イヴリン嬢は七回殺される
平均:6.50 / 書評数:4