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[ サスペンス ]
死のミストラル
ルイ・C・トーマ 出版月: 1976年09月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1976年09月

早川書房
1982年07月

No.1 7点 人並由真 2021/04/12 04:22
(ネタバレなし)
 その年の10月。31歳の建築家ジルベール・シャンボは、26歳の愛妻エブリーヌとともに、平穏そうな日々を送っていた。だがある夜、彼の自宅に「アントワーヌ・カルビニ」と名乗る青年がいきなり来訪。カルビニは去る6月24日、ジルベールのナンバーの乗用車がカルビニの新妻ジョゼットを挙式の日に轢き殺したと主張。ジルベールは身に覚えがないないひき逃げへの告発に反発して抗弁するが、やがて事態は意外な方向に……。

 1975年のフランス作品。
 評者はHM文庫版(翻案テレビドラマが放映された時に刊行された)で読了。
 ルイ・C・トーマはフランスのサスペンス系作家で、日本には長編が4作紹介。80年代の本邦ミステリ界ではそこそこ人気を得ていたようなような印象があったが、本サイトでもAmazonなどでもレビューがまだない。21世紀の現在では、半ば忘れられた作家ということになるのか。
(と言いつつ、評者も読むのは、今回が初めてだ。)

 本作の傾向が近い作家の名前をあげれば、ウールリッチとアルレーあたりの混淆という感触。少しボワロー&ナルスジャックも入っているかもしれない。要はフレデリック・ダールやミッシェル・ルブランの系列かも。

 プチブルの主人公である若夫婦が蟻地獄に滑り落ちるように、一進○退しながら逆境にはまっていく大筋は息苦しいが、一方で小中の山場が豊富に用意され、サクサクお話が進んでいくのはなかなかよろしい。

 キャラクターの造形なんかも、脇役かつポジション的には重要な役割の警察官コンビなんか、お話の流れの中のスキマを活用して、キャラが立った人物を登場させようという感じ。こういうノリは悪くない。本当にシリアス一辺倒に語ったらかなりダークになってしまう話に、よい感触で潤いを与えている。
 終盤のどんでん返しの波状攻撃は、中には先読みできるものもあるが、それなりの量感と手数の多さで得点に成功している。
 クロージングは(中略)という印象なのだが。

 文庫版で300ページ強。3時間で読めた佳作~秀作。
 たぶん作者は、この手の(中略)系サスペンス路線での安定株でしょう。


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ルイ・C・トーマ
1976年09月
死のミストラル
平均:7.00 / 書評数:1