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[ SF/ファンタジー ]
動く人工島
ジュール・ヴェルヌ 出版月: 1978年02月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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東京創元社
1978年02月

No.1 7点 Tetchy 2020/06/07 23:35
ヴェルヌの冒険譚の内、諸国を回る作品は処女作の『気球に乗って五週間』から『海底二万里』、『八十日間世界一周』、『グラント船長の子供たち』に『征服者ロビュール』など数多くある。
それらの移動手段は船に気球に潜水艦、気球船、はたまた象などその他様々な乗り物が駆使されていたが、本書のそれはまさに破格。タイトルにあるように今回諸国を回るのは島そのもの。27平方キロメートルの面積を持ち、その中にはミリアード市という独立した都市を備えた、電気を動力に推進する巨大なスタンダード島だ。

アメリカの会社<スタンダード島株式会社>によって建造されたこの島は<太平洋の宝石>の異名を持ち、島の面積の3/4は農耕地で牧場、菜園、果樹園までもがある。

そして唯一の市ミリアードは5平方キロメートルの面積を持ち、完全にアメリカからも独立した自由都市で商工会議所、株式取引所はなく、関税によって市の予算を賄う。しかし人口は1万人しかおらず、なぜなら市内に不動産を持つことはどんな大金持ちでも許されておらず、全て賃貸。しかも中流層以上の物でないと住めないほど家賃が高い―最低でも家賃は100万フラン!―。但し電力、暖房、圧縮空気、水道などは無償支給。最先端の設備を備えており、ホテルは温水・冷水が給水される蛇口に風呂湯沸かし器、扇風機に自動ブラシ、そして香水噴霧器まであるのがフランス人らしい発想だ。

この島の最たる特徴は冬の季節に寒さから免れるよう南洋の島々へ避寒できることだ。従って島の住民は冬を知らずに1年を過ごすことができるのだ。

現代ならばマンガで扱われるようなアイデアをヴェルヌは晩年の作品で小説として著していたのだ。

今までにないスケールの移動機器スタンダード島。それはどんな嵐にも動ぜず、他の船に接触しようが傷ひとつ追わない堅牢無比の島。
この夢のような乗り物でさえしかし人間の傲慢さで脆くも崩れ去る。物語の最後にヴェルヌが投げ掛けるのはこんな神の摂理に反するような物は作るべきではないと批判的な意見だ。

ある意味それはこれら科学技術の発展が後の第1次、第2次大戦へと繋がっていったことを予見しているようで改めてヴェルヌの先見性に驚きを覚えるのである。


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